帝国主従組
「おや……?次の視察地はミシュラムなのかい?」
積まれた書類を片付けていたオリビエがとある書類に目を通した途端、嬉しそうな声をあげる。オリビエから見て右の壁際に姿勢良く立って控えているマゴリアは頷いてみせた。
「はい。マリアベル様の計らいもあって。風流人な皇子ならさぞ喜んでくださるでしょうとの言伝を承っております」
「いやいや、マリアベル君には感謝の言葉も無いよ。……ところでミュラー君?」
書類から顔を上げ、マゴリアの隣に立っているミュラーへちらりと流し目を向けるオリビエ。大体オリビエがこういう顔をする時はロクでもない事を考えているか仕事をサボりたい時の口実を見つけた時などだ。問いたくはないが、無視をすれば後々喧しい。眉間に皺を寄せ、心底面倒そうにミュラーは問う。
「……何だ」
「最近ミシュラムに湖水浴が出来る施設が出来たと聞いたんだが」
「ああ、そう言えばそんな話があったな」
「……気になるだろう?」
ニヤリ、と笑うオリビエの意図が汲めずぶっきらぼうに「何がだ」と返す。そう言えばオリビエは心底楽しそうに、ニヤニヤとしながら「またまたー」なんて声を上げ、びしっとマゴリアを手で示した。
「マゴリア君の水着に決まってるだろうっ!」
「仕事をしろ」
「ミュラーくんってばボクの前だからって照れちゃって♪」
「仕 事 を し ろ」
「はい」
ミュラーの一喝で大人しく新しい書類に手を伸ばしたオリビエを見ながら、マゴリアは呆れたように溜息を吐いた。
2014/09/14