ガイウスとフラン
「……しまったな」
軽いし、持てそうだからと高さのあるダンボール箱を二つ抱えて運ぶのは誤った選択だったと、折り返しのある階段の中腹で途方に暮れながら思う。何とか一階から二階に上がる階段の半分までは上れたが、箱を落とさずバランスを保ちながら塞がれた視界で見えない足場に足を掛けるのは中々難しい。半分この場に置いて、片方だけ先に教室に置いてから残りを運ぶか。とは考えたが下ろすのが体勢的に厳しい。ダンボール箱の蓋は開いているので、下手に傾ければ中の大量の紙束が階段に散乱する恐れがある。それだけは何としても避けたかった。つまるところ、
「このまま上がるしかないのか」
周りは放課後からか生徒の声が少なく、頼れそうにない。仕方ない、とフラフラしつつ歩を進めて階段の段差があると思わしき場所に足を伸ばす。足裏にする硬い感触。よし、とそこに体重を掛けた。良いぞ、このままの調子で行けば―――
ズルっ
「っ、!?」
次の段差に足を伸ばした時、足裏が上手く底を捉えられず、ガクンと私の体は不自然に傾く。まずい、後ろに倒れる。高さは無いがこの荷物に加えて上手く受身の取れないこの状態では怪我は避けられない―――!
「教官!」
ガッと、誰かに後ろから抱き留められる。荷物ごと私を、だ。ちらりと上目に誰か確認してみればやはり、
「ガイウス、君か。助かった、有難う」
「いえ。……フラン教官、それは?」
「教頭に頼まれた仕事でね、資料を二階の空き教室で纏めてくれと言われたのだが……少々無茶をしてしまったみたいだ」
「オレも手伝います」
「部活は?」
流石に部活持ちの子に仕事を頼むのは忍びない。しかしガイウスは僅かに首を横に振る。
「いえ、今日は部長が『制作に専念したい』と部員を追い出したので……」
酷く恐縮そうなガイウス。そう言えば、美術部の部長は大層な変わり者で―――とまで考えて思考を中断する。
「まあ、手伝ってくれるのなら有難い。早速上半分の段ボールを持ってはくれないだろうか」
「はい」
流石はZ組で一番身長のある男子だ、と思わず感心してしまう。重い段ボールをひょいと軽く持ち上げてしまった。
「二階の空き教室でしたね?」
「ああ、頼む」
後で手伝ってくれたお礼をしなければな、と考えながら私は残った一つを抱え直し、再度階段に足を掛けた。