微睡みの四日間


待ちに待った昼休み。わたしは四限目の授業で使った教科書を机の中にしまい、筆箱を閉じて机の隅に追いやってから机の脇に下げている鞄からお弁当箱の包みを取り出す。それを右手で持ちながら席を立って後方を振り返った。其方には昼休みになるなり士郎を取り合う柳洞と間桐が居て。
わたしは足音を消して少し屈みながら士郎の背後に回り―――サッと士郎の右腕を取りながら彼の肩越しに男子二人を見た。あっちにしてみれば唐突にわたしが背後に出てきたようにみえるんだろう。そりゃ驚く。士郎も驚いてるっぽいし。

「柳洞、間桐、悪いけど士郎はわたしとご飯食べる約束してるから!」

「えっ」
「は?」
「おい?」

にんまり笑って勝利宣言をしたところで、わたしは士郎が持っているお弁当箱を右手で取る。士郎の腕を取りながら教室の外へ一歩足を向けて一言。

「そういう訳で―――勝ち逃げ!ふははー!」

「ま、待て冷泉院!!」

なかば士郎を引っ張るようにして駆け出しながら、わたしは屋上を目指した。



――――――




桐茴に連れられて来たのは屋上だった。時期的にはまだ寒い時期だ。当然寒風の吹く屋上で昼食を食べる生徒なんて居らず、居るのは俺と桐茴だけで。
桐茴は風の当たらない場所へ行くと隣の場所をぽんぽんと叩く。まあ、この場に留まれば風邪を引きそうだ。大人しく桐茴の隣に腰を下ろすと俺の分の弁当箱を渡された。

「屋上までくればあいつらも来ないでしょ。ほら士郎、食べよー」

「はぁ、全く……強引だな、桐茴」

包みを開けながらジト目で睨むが、桐茴は何のそのと言った様子で笑いながら自分の分の弁当箱の包みを開けて箸を取り出していた。

「へへへー、だって士郎とご飯食べたかったんだもん」

「いつも俺の家で一緒に食べてるだろ?」

「皆とじゃなくて二人っきりで!」

む、と頬を膨らませながら蓋を開ける桐茴。中身は朝飯と同じだから必然と俺と同じ中身になるのだが―――

「士郎、あーん」

「いっ……!?」

箸に煮物を載せ、俺の口元に持ってくる。い、いや、待て待て……!

「学校だぞここ!」

「わたし達以外いないよ?人除けのルーンも貼ったし」

念の入れどころが間違っている!!

「ほらほら、煮物落っこちちゃうよー」

「うぐ……」

確かに後数秒で落ちてしまいそうな里芋の煮物が桐茴の箸の上で震えている。ええい、こうなれば―――!

「ん……。冷えてても旨いな」

「ほんと!?やー良かった良かった!これ白だしで煮た奴だからあんまり味染み込んでないかなぁなんて思ったけど、やっぱ一日経つと違うねー」

カラカラと笑う桐茴。まあ、こういう笑顔が見れるのならこう言った二人きりの昼飯も悪くは無いのかな、なんて思いながら弁当をつついた。
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