好く人の行動
いつからだろう、と振り返ってみるけどやっぱり彼を意識しだした時の記憶なんて出てこなくて、ちょっと首を傾げてみる。
最初に会った時の事は覚えてる。新しい人が来たから挨拶に行くって兄さんについて行った時。家主のおじさんの隣に居たのが彼だった。年の近い子供、それは男の子だったけど一緒に遊べる子供が身近で増えた事が嬉しくて、遊びに行こうと何度も誘った覚えはある。一緒に深山町を探索しまくって、隣町の悪ガキどもをこらしてめて、日が暮れるまで遊んだら感想を言い合いながら坂道登って。つまる所常々一緒にいた。いや、わたしがくっ付いていた、と言った方が正しいかも知れないけど。
小学校も一緒で、中学も一緒で、偶然だけど高校も一緒。驚く事にクラスもほぼ同じで、わたしはいつも彼の近くや隣に居た。彼の右隣がわたしの定位置。そこからわたしは彼を見る。彼の努力を、継いだ意志の強さを、その歪さを。最も近い場所からそれらを見る。その意志を支えたいと思った。その願いの先をわたしも見てみたいと思った。その在り方が綺麗だと思って憧れた。だから、わたしはいつも彼の側にいて。一緒に居たいと願って。ああ、つまり、わたしは―――
「いつの間にか、士郎が好きになってたんだ」
息を吸うように、水を飲むように。そんな当たり前さでわたしは士郎に恋してたんだなと、漸く理解する。士郎が好きだから側にいたい、士郎が好きだから支えたい。意識してみれば成程と思える理由。だから、
「おーい、桐茴。帰るぞ」
「あ、うん!」
わたしは今日も、彼の右隣を歩いていく。
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