最近、シグがおかしい。
私に何か隠し事している感じがする。

『…浮気…してるのかな』
「違うんじゃない、かな…?」
『だって何かよそよそしいし…』


ぶー、と頬を膨らまし唇を尖らせる。
私の愚痴にナミネは苦笑いする。

「なにか、理由があるんじゃ…ないかな?」
『だって…隠し事しないって約束したもの』


テーブルに突っ伏して、窓の外を見る。
外は真っ赤な夕日だ。はぁあと溜息を吐く。


「ナマエ…」
『ごめんねナミネ…せっかくお話しようって言ったのに愚痴ばっかりで』
「ううん、いいよ。何だかナマエに頼られて嬉しい」
『うーナミネ!やっぱりいい子だぁあっ』


ぎゅうーと抱きしめ二人で笑い合う。
そして私は城へと戻る。部屋に入るとやっぱりシグはいない。
泣きそうなのを我慢してベッドへ潜り込む。


(本当に浮気してたら…どうしよう…やだ)


悶々としながら、布団から顔を出す。
そこで気付く。テーブルに何かが置いてある。
のそのそと這い出て近付くとフワフワと膨らんだカップサイズのケーキ。


『なに、これ…』
「お前に」


背後から伸びて来た手に驚き振り返るとすぐ近くにシグの顔。


「お、なに、嬉しくて泣いちゃった?」
『…違うし…最近シグがっ…よそよそしいし…浮気、してるって思ったら…泣けてきて…』
「ごめんな、構ってやれなくて。これ、作るの練習してた。」
『え…?』


背後にべったりとくっつかれたまま、シグは話しを続ける。触れたところが熱い。これ、と指先にはあのケーキ。


「…今日バレンタインだろ」
『バレンタイン…あ?ぁ!!』
「やっぱ忘れてたな。」
『バレンタインだったね…忘れてた。』
「んで、俺がお前にプレゼント。」
『シグが…作ったんだ』


それが何だか嬉しいようなおかしいような、くすぐったい感覚だった。


『食べていい?』
「おー、どうぞ。」


お皿に盛られたそれにスプーンを入れると中からとろりとしたチョコレートが溢れ出た。


『フォンダンショコラだ!』
「お前大好物だろ?」
『うん!ん…、おいしい…』


一口掬って振り返り、シグの口許に持って行く。
あー、と言う声とともにぱくりと口の中に消えた。


「んめー」
『うん』
「さすが俺。」
『はいはい〜』
「ホワイトデーよろしく」
『ふふ、ホワイトデーもシグが渡すんだよ!』
「じゃあチョコレートの変わり、くれるよな?」
『甘いちゅーをあげる』


ちゅ、と可愛いリップ音を鳴らし頬に口付けて思い切り抱きしめた。


END

アンケート結果2位の2さんでしたぁ。
今回は2、ひとりでできるもん!的な感じにしてみました。
あと、ナミネちゃん出したかっ…


イトハン