「やあヴィクセン。」


その声にナマエの心臓が跳ねた。


「…回廊を使って人の部屋に入るな。不法侵入だぞ」
「ははは、すまないな」
「何の用だ？」


そのやりとりにナマエはただ祈る。


（早く行って、何処かへ行って、気付かないで！）


気配を悟られない様に深呼吸し、気を落ち着ける。


「…いや、ナマエがここに居ないか、と思ってね。」
「……来ていないが…ナマエは長期任務だろう？」
「帰ってきてるんだ」
「…そうか。」


ルクソードはちらりと視線を寝室に向けた。


「ちょっと、いいか？」
「あ、ああ。」


そう言い、寝室へと歩を進め侵入する。


「何か？」
「ほぅ……？さっきまでナマエはここに居たのか。」


その言葉にヴィクセンは冷や汗を流す。



「何のことだ？」
「隠し立てすると損するぞ？ヴィクセン。」
「…確かに来ていたが、慌てた様子で何処かへ行った。」


どもりそうな言葉を何とか吐き出し、そう言い放つとルクソードは自分の顎に手を掛ける。


「どこか、ね。」
「ああ」
「それは」


ルクソードの手が、一つの扉を勢い良くあけた。


「このクローゼットの事かな？」
「…………！」
『……ッ！』


にっこりと頬笑み、ヴィクセンを見据える。ひしひしと伝わるそれは殺気。
ルクソードは屈み込んでいるナマエの腕を強く引き上げた。


『いやッ……痛い……！』
「ルクソード！ナマエは怪我を…っ」


ルクソードの荒々しい扱いを止めようと声をかけるとルクソードの目はヴィクセンを睨み付ける。


「それがどうした？ナマエは俺のだ。どう扱おうと貴方には関係ないだろう？」


笑顔を見せてはいるが、その表情は目が笑っておらず偽りの笑顔――敵意。


「言ったはずだ。隠し立てすると損をする、と」
『ルクソード…！やめっ…！』
「!!」


ルクソードの骨張った手がヴィクセンの首を掴み上げる。酸素を塞がれたそこからは小刻みに息を吸う音が漏れた。


『お、願い…！やめてくださ…戻るっ、戻るから…！』
「…ナマエには少し思い知らせてやらなければいかんな…？」


だらりとうなだれるヴィクセンを壁に投げ付けるとヴィクセンは咳き込んだ。


『え…な、に…』
「もう二度と逃げたいなんぞ思わん様に思い知らせてやろう」


そう言ってナマエの衣類を引き裂いた。


『…い、やっ…！』
「…ル、クソー……ド…っ」
「貴方はそこでみてるといい。」


ヴィクセン目がけて、カードを放つ。それはヴィクセンを壁に縫い付けるように食い込んだ。


『やだ！やめて…！』
「ルクソード、ルクソード！」
「お前は俺のだ。俺以外見るな」


ヴィクセンのベッドに押しつけられ逃げようと抗うナマエにルクソードはほくそ笑んだ。


『イヤだ…ヴィクセン、助けて…ヴィクセン！』


ナマエの縋る手の先は壁に張り付けられたヴィクセン。
ルクソードは引き裂いた衣類を剥ぎ取り、ナマエのうなじに歯を立てた。


『ヒッ……ぃあ…！』
「…今日もいい声で鳴いてくれ」
「ナマエ！ルクソードやめろ…ッ！」


ヴィクセンの叫びも虚しく、深々との中に入り込んで行く欲の塊。
肉を引き裂く音がヴィクセンの耳に届く。


『いやっ……あ……ぅ！』
「…く、」
『かっ…あ……ぁﾞ…』
「ルクソード…やめてくれ…！」


ナマエの悲痛な面持ちを目の当たりにしヴィクセンは自分の腑甲斐なさを悔いた。


『ひ、っあ…ア……ぅ、ん…っ』
「は……我慢しなくていい。いつもやっている事を、ヴィクセンに見せればいい…」
『や、だ…っ……ヴィ、クセ……ン…ッ』


虚しく空気を掴むナマエの手。ヴィクセンはその手を取ろうと必死に手を伸ばした。
ナマエの瞳から涙が落ちる。


「煩わしいな」
『ふっ…ぅく……ああぁッ！』


ヴィクセンにむかって投げられたナマエの手を後ろ引き伸ばし、律動を早めた。


『やっァ、あぁ、ん……ぁ』
「もう……やめてくれ…！」
『いやっ、あ――――…っ！』


びくん、とナマエの身体が震え、動かなくなった。


「……む…」
「ルクソード…ッ！」


ルクソードも、ナマエの中へと欲を放つ。ヴィクセンはその光景に顔を逸らした。


「…いいかな、先輩？」
「………」
「ナマエは俺のだ。例えナマエが貴方に想いを寄せていても知った事ではない。それにそれはナマエの思い過しだ。」
「……黙れ」
「ナマエは本当は俺の事を愛している。だからヴィクセン、貴方の入る隙などないという事だ」


ずる、とナマエの中から自身を取出し乱れた衣類をきちんと着用する。


「ルクソード…それはお前のエゴだ…本当は気付いてるんだろう、ナマエが逃げた理由を…」


そう言うとルクソードはヴィクセンの元へと足を進めた。


「………」


ヴィクセンの前に来たと同時に、抵抗の出来ない身体目がけて鳩尾に拳が入る。


「がッ……あ!!」
「…俺を試すような発言は控えてもらいたいものだな」
「ぐ…っ、ぅ……！」


更に足で広い胸板を抑えつけ、ヴィクセンに次の攻撃を仕掛けようとルクソードの足がゆっくりと胸板から離れた。



イトハン