サイクスの、あの艶やかな髪の毛に魅入ってしまうのは仕方がない事。
さらさらと流れる絹糸の様な髪の毛をくんっ、と軽く引っ張る。その動作でサイクスの頭が自然と小さく傾く。
「…何だ?」
『んー?サイクスの髪って艶やかだよね』
「は?」
『シャンプー何使ってるの?トリートメントもしてる?コンディショナーもきちんと使ってるんだよね?』
質問攻めに合うサイクスはたじろぐ。
『何?』
「質問の内容がよくわからない」
『まぁいいや。風呂場見せて』
すたすたと風呂場に向かって歩くナマエの後をサイクスもついて行く
『はー。なるほど』
「?」
『ふんふん…』
「ナマエ?」
『サイクス、これって誰からもらった?』
「何で貰ったってわかるんだ?」
『そんなこたぁどーでもいいの。誰・か・ら・も・ら・っ・た・?』
一区切りづつ言うナマエに怪奇そうに眉をしかめたが、何か怒っているオーラが出ているのが伺えたのでサイクスはじっとナマエを見つめた。
『誰から?』
「ゼクシオンからだが…」
『ふ〜んむ…』
風呂場から出るナマエに金魚のフンみたいについて部屋へ戻る。
「なぁ、ナマエどうし…」
『時にサイクス、寝る時部屋の鍵と寝室の鍵、閉めてる?』
「は?」
突如言われた言葉にサイクスは唖然とする。
「閉めてないが…別に閉める必要はないだろう」
『ある。』
「何故だ」
『洗髪液調べても、あれは普通のものって事がわかった。だけどその艶やかな髪質はおかしい』
探偵よろしく、ナマエは腕組みしながら言葉を述べた。
「つまり?」
『サイクスが寝てる間に何かされてる。絶対。じゃなきゃこんな艶やかな髪質にならないもん。少しはゴワついたりするよ?』
「まぁ…確かに…朝起きたらあまりハネてないな」
そう言うとナマエは閃いた表情になる。
しかしナマエの次の言葉にサイクスは動揺する。
『わかった。私、今日サイクスと寝る。』
「はっ!?」
『犯人、調べようよ!ね!私、壁際で寝るからさ』
「そ、そういう問題じゃ…って勝手にベッドにあがるな!」
『ほら、もう寝ました!って振る舞わないと!おいで!』
犬を呼ぶように手を軽く叩くナマエに溜息がもれる。
「…知らないからな…」
『ん?』
「何でもない。」
今日は寝れないな、と心の中で嬉しい反面複雑なサイクスだった。
「でも…まぁ、お前を繋ぎ止めれるのなら…別にいいがな」
『ほら早く!犯人来ちゃうよ!』
ぽつりと呟き、ナマエの数センチ傍に寝転がるとナマエの手がサイクスの細い髪の毛に指を絡めた。
(さらさら揺れるそれはまるでわたしを引き留めるいと)
『……いと、みたいだね』
「そうか?」
『うん』
「…お前を繋ぎ止めるには、細すぎるな」
『引き契っちゃえそうだよね』
「…………」
そう言う意味じゃない、と思いながら、枕元の燈を消した。
END
犯人は1で。
06.8.10
イトハン