私にはどちらかなんて選べないの


『ア、っぅ……ふぅっ、あ…!』
「ナマエ、ナマエ……っ」


いつもギリギリまで追い詰められて追い立てられて
まるで死刑台にいる私の気持ちなんて
貴方は知るはずもないでしょう


『やっ…デミぃ……っ…』
「ナマエは淫乱だね」
『んっ……ふぁッ…!』
「俺に抱かれてどっちの"俺"を呼んでるの?」


ぐちぐち響く音が非道く耳障り
うるさい
私は貴方の声だけ聞いていたい
私は貴方の体温のみ感じていたい


『デミックス…っ…好き、好き…愛してるっ…』
「俺もだよ、ナマエ」
『お願…ぁ、い……私を』
「いいよ、壊してあげる。」


軋むベッドもうるさい
目の前を滲ませる涙も邪魔

『は、っ…んん…っ!もっと…もっと…!』
「可愛いナマエ。」


優しい口付け
瞳に、彼に宿る獣が


『か………わ、る…』
「ん……ッ」
『や、めて…っ……中は…っ』
「黙れ…っ、く……ッ!」
『やっ……あぁんっ!!』


制止の声なんて聞くはずない。だって今の彼は"彼"だもの。
ナカに感じるデミックスの熱にぞくりと身震いする。荒い吐息が耳元を支配する


『デ、ミ……ックス……?』
「はぁ……は……ナマエ……ごめ、やば…っ」
『ん……?』
「中に…出しちゃった…」
(ああ。"いつも"のデミックスだ)
「ごめん…」
『もう…いいよ……しちゃったものは…しちゃったんだし…』
「おれ…またナマエを傷つけたんだ…」


デミックスの指が体を辿る。
"彼"、もう一人のデミックスがつけた傷


『…仕方ないよ』
「俺…もう耐えきれない…ナマエを傷つける俺なんか…消えればいいのに…っ」
『あー…もう……泣かないでよ…大丈夫だってば…』

暖かい涙
私には、純粋な貴方は眩しい
勿体ないの


『ほら…も、眠って?』
「う………ん……」


きつく抱き締めれば子猫のように擦り寄る彼
もう一つの精神が体を支配するのはどんなに辛い事だろう


「ナマエは…"表"の俺の事…好き…?」
『好きだよ。大好き。どっちも好きよ?』
「…もしどっちか選べって言われたら、どっちの俺を選んでくれる…?」


柔らかい髪。優しい匂い。

『んん…』


激しい感情。
残虐的な体。


『どっちかなんて…選べないよ…どっちも貴方だもん。この答えは不満…?』
「ううん…ありがと。変な質問してごめん」


繋ぎ合わせた手がきつく握られる
それは"表"の彼の意志か"裏"の彼の意志なのか知らない
どっちも好き、なんて
なんて傲慢なんだろう



『愛してる、デミックス…』



(What can love him who is poor with the right side and wrong side only as for me.)


END

意味。

06.11.8


イトハン