(貴方を
心の、底から)


「ほらナマエ。おめーの為にフランスパン買ってきた。食べなきゃ胸でかくなんねーぞ」
『うるさいシグ。余計なお世話』
「ナマエ。お前の好きなコーンスープだ」
『ルク…?何杯目と思ってる?』



毎度毎度、こう美味しい料理を腕を奮ってだしてくれるのは嬉しいのだが(料理を作ってるのはルクソードだけだが。)


『あのさ…』
「何だ?何か他に欲しいか?」
「子供か?子供が欲しいのか?なら今す…ぐェっがッ!」


ルクソードの骨張った手が見えない早さでシグバールの脇腹を突き刺す。
当の本人は突然の刺激にふるふると子犬のように震えている。


「不埒な事をナマエの前で言葉にするな」
「くっ…くかかっ…てめぇっ…今のは反則…」
『シグ、笑いながら喋んない。怖いから。』
「だ、だってこいつが不意打ちしてくるから…やべっ…笑いが…」


どうやらツボを刺激されたのか、シグバールはひくひくと笑いを堪えている。


「ごほっ…ひっ!…あ、やば…っ…はははっ…!ひっく!」
『…しゃっくり?』
「ん、っく…おぉ。笑いすぎ、たら…ひッ!…出ん…だよッ」
『大丈夫?もう…ルク、ダメじゃん…シグが可哀相だよ』


はぁ、と溜息を吐きながら元凶を叱ると悲しそうな顔が浮かぶ。


「……すまん」
『ほら、シグにも謝る!シグ、大丈夫?』
「ん、お…ぉ…だいっ!……じょう、ぶ…」


ヒックヒックと息が止まりそうな勢いで引き付けを起こす背中を見て、ナマエは何かを思い出したように閃いた。


『…驚かせたりすると止まるって言うよね』
「…そ、れ言ってるっ…ひくッ!…時点で、今更驚かす行為しても…っ、驚かねぇよ…ぁっ」
『んー…そのままだと何か恥ずかしいからさぁ、どうにかして止めようよ』
「…変な声」
「てめ、元はと言えばてめぇ、ヒッ…ク!」
『はぁ…。元はと言えばルクの所為でしょ』


軽く頭を小突いてやると、確実に落ち込んだのか、ルクソードはがたんと椅子に座り込む


『もー仕方ないな。シグ?』
「ん゙…?」
『ごめんね』


ナマエは、ぐび、と水を口に含む。それを見ていたルクソードは嫌な予感がしてぴくりと眉根を寄せた。


「待っ……!」


それは的中し、ルクソードが止めるより早く、それは進められた。


「ん!?」


ルクソードの手は宙に浮いたままナマエの行動にシグバールは目を見開いた。


『ぷはっ』
「ん、ぐ……」
「…………!」
『どう?』


ごくり、と喉が上下するのを確認し、ナマエは尋ねた。


「…ナマエ、から、の、口移し…」
『いきなりだったらびっくりするかなーと思って。ごめん、本当は好きな人にやってもらったほうがいいよね…?勝手にやっちゃった…ごめん』
「いや…十分…デス…」


シグバールは口元を押さえ、かぁあああ、と顔を真っ赤にした。


『よかった止まったみた』
「ヒック」
「…止まってないみたいだな」
『あら…キスし損?』
「いや…俺は嬉し…っ!ぜ…」


ナマエは、あーあ、と呟いて水をくぴくぴと飲んだ。


「…貴様…よくも」
「あ?…何だよっ…ルっく…!」
『…ルク?』
「ナマエの唇を!」
「元はとッ…言えばて、ひっ…!めぇの所為っ…だろ!」


ルクソードは力一杯にテーブルに拳を叩きつけた。その音にナマエはびくりと体を強ばらせた


『ちょ…喧嘩いくない』
「…許せん」


ガッ、と勢い良く捕まれた胸倉。ナマエは慌てて止めに入ろうと立ち上がる。が。


「ん゙ん!?」
『……!!』



その状況にナマエの伸ばしかけた手はぴたりと止まる


「ぶっ」
「ふ……っ!」


お互い勢い良く離れ、本日2回目のキスにシグバールはめちゃくちゃ顔を引きつらせた。


「ナマエの唇は返してもらったからな」
「てめ…ざっけんな!誰が好き好んでてめーとキスなんざしねぇとならね…」
『イヤ…』
「……ん?」
「あ?」
『ルクのばかっ!』
「ぐっふ!」


力を込め、素早い動きでルクソードの大きな胸板を押し退け、ナマエは涙を浮かべて部屋から逃げ出した。


「…お、俺が何を…?ナマエ、待て!」


ルクソードは慌ててナマエのあとを追い掛けた。その場に残されたシグバールはぽつりと呟く。


「俺も泣きてぇ……」


ルクソードからのキスによって止まったしゃっくり。シグバールはその場にへたりんだ。




****


「ナマエっ、待て!どうしたんだ!」
『や…離してよバカ!』
「少し落ち着け、何故泣いているんだ!?」


ナマエを嗜める様にルクソードは両手でナマエの腕をきつく掴んだ


『だ、だって…ルク…が…』
「俺が…?」
『私以外の人とキスしたぁあ!』
「いやっ…だから、あれは…」
『ううう…!』



ぼろぼろと涙を流すナマエに、ルクソードは慌てふためく


『このっ…浮気者…』
「…じゃあ言わせてもらうがナマエだって、奴とキスしただろう」
『あれはキスじゃない!シグを驚かせるために!』
「でもキスはキスだろう。だから俺は…許せなくて」
『ゔー…』


ナマエを泣かせているのなんて、他の機関員にばれたら厄介だ、と思いルクソードはナマエを抱き締めた。


『ル゙グのバガぁ……』
「悪かった…」


そう言って、ナマエに口付けようとし、一度止まる。自身の唇を拭き、ナマエの唇をも拭いて口付けた。
シグバールにやったキスを吹っ飛ばすように、長く、深いキス。
瞬間、ナマエの体ががくんと地にへたりこんだ。


「…!?だ、大丈夫か!?」
『ルク…』


ずっ、と鼻を啜る音と軽い引き付け気味の声。


『…腰抜けた…』
「……何故?」
『ルクの所為だよー!』


本日2人目の顔を真っ赤にした人物、ナマエはそっぽ向く。


「…ほら、支えてやる」
『あり゙がと…』
「キスだけで腰を抜かすな。まだ早いぞ?」
『うるざい…って何が』
「今からもっと立てなくしてやると言う事だ」


耳元に残るヒヤリとした舌の感覚と、甘く囁く低い声。


『み、耳元で喋んないでっ』
「感じるからか?」
『ルクの馬鹿!変態っ』


軽々とナマエを抱き上げると首に華奢な腕がまきつく。


「いい子だ」
『……ばか』


心の底、貴方の事を)



「愛してるよ」
『だからっ…何でそう恥ずかしい事を真顔で言うかな!』




END

ひぃいい!ぽっ…ポン多様に捧げる品なのに何かおかしい…!
ポン多様…!返品可能でございます!クーリングもいたします…貴方に捧げます…!ポン多様のみお持ち帰り可能!


06.11.12


イトハン