男は簡単に浮気をする。
"浮気される方に不満がある"と人はよく言う。


そもそも、浮気は何でするのかと考えたら切りがない。
遊び心だとか、一人の女に飽きただとか、そんなものが一般例。

ほら、ここにも。

「悪い。もうしない。」
『………』

目の前に両手を合わせて、深々と頭を下げる男。
ツートンカラーの髪の毛が、俯いたお陰でよく映える。

『…私に不満があったとか?』
「違、う……。酔ってたっつうのもあってだな…」
『…ふぅん…』

困ったように頬をかく男にただ溜息を零す。

『別にいいんじゃない?私そういうの気にしないし…そういう事でシグバールの事束縛したくないし』
「…え、怒ってない?」
『……そこまでは。』
「マジ?ごめん、もうしない!」

そう言っていたが、そんなに簡単に治るわけがない。

*****

「ナマエ?」

談話室に座り、本を読んでいたナマエはその声に顔をあげた。

『あ。ルクソード』
「めずらしいな」
『そっちこそ。ザルディンと一緒とか、かなり珍しいね』

ソファに横なりに寝転がっていた体を起こした。

『最近暇だね。』
「任務がないからな」
『こうも暇だと何していいか分かんないよね』
「シグバールと何処かに出掛ければいいのでは?」
『え?任務って言って出てったけど…』
「今日はないと言って外に出掛けたが」

ザルディンの言葉に、ナマエはぴくりと眉を顰めた

『ふぅん…』
「いや…もしかしたら、急に入ったのか…も、」
『ザルディン。別に隠さなくていいよ?』

ぱたん、と本を閉じナマエは足を組んだ。

『…浮気性のシグバールにも困ったなぁ』
「ナマエ、お前は苛つかないのか?」
『別に?』
「お前達は本当に付き合ってるのか…?」

二人は哀れみの目で見るように、ナマエを見た。

『…ねぇ』
「ん?」
「何だ」

何かを思いついた様ににこりと頬笑むナマエの姿に二人は首を傾げた。

『私と遊ばない?』
「……鬼ごっこか?」
「それともババ抜き?」
『可愛らしい発言するんだね』
「他に何がある」

訝しげに眉を顰めたザルディンの傍に近付き、顎に手をかける

『…オトナの遊び』
「……!!」
「んっ!?」

ぴちゃり、と舌が絡まる。
重ねた唇が離れると名残惜しそうに銀糸を引いた。
拍子にザルディンの膝の上に跨がる様に体を乗せた。
「な、にを」
『…いい加減うんざりで。』
「は?」
『シグバールの浮気癖。』

ナマエの首より一回り大きいザルディンの首に舌を這わせた
その所為で、小さく身じろぐ体が伝わる。

『ルクソぉドは乗ってくれる?』
「なかなか楽しそうだ」
「ルクソードッ」
「何を拒む必要がある?」

ルクソードの言葉に、ザルディンは目を見開いた。

『ただの遊びでしょ?』
「…ナマエ…ッ、お前はそれで…」
『よくなかったら誘ったりしないよ。ねぇルクソード』
「愚問だ」
『ふふ、じゃあシグバールには内緒、ね?』

目の前で硬直するザルディンの髪に指を絡めた。


それから秘密の関係が始まった。


彼が他の女と楽しむたびに私達の秘密の回数も増えて行くのを知らずに、彼は深みに嵌まって行く

「たぁだいまー」
『シグバール!お帰り』
「ナマエ〜…あー落ち着くぜ…会いたかった、ナマエ。…なぁ俺の部屋に行かね?」
『あ、ごめんねー?先約があって無理…』
「何だよそれぇ。俺よりも大事な事?」
『うん』

にこりと頬笑むとシグバールは怪奇そうに眉を顰めたが、軽くキスを交わすと自室へと戻って行った

「いいのか」

廊下の曲がり角からルクソードは現れ、壁にもたれ掛かる

『何が』
「折角久し振りにシグバールがお前を求めて来たのに」
『だって今は彼とする気分じゃないもの。』
「残念。折角誘いに来たんだが」
『ルクソード?私は彼と、って言ったのよ』

華奢な腕がルクソードの首に絡みつく。
ねだる様に唇を求めるナマエにルクソードは答えた。

「それは失礼、姫。」
『ザルディンは?』
「部屋にいる。」
『じゃあ行こ』

しゅるりと回廊が開き、二人はそれをくぐり抜けた。

****


『ザールディン。」
「ナマエ」
『遊びに来ちゃった』
「……確かシグバールは今日…」
『帰って来てたよ』
「なら」
『私、ザルディンと遊びたいの』

ナマエはソファにもたれ掛かるザルディンにのしかかり、コートのファスナーを口で降ろした。

「ルクソード、は」
『…デミックスが任務だって知らせにきてた』
「そうか」


半裸になったザルディンを目の前にし、ナマエはにこりと頬笑んで屈み込む
布によって覆われたザルディン自身を露にし、ナマエは唇を寄せた。

『ん、』
「………ッ」

れろりと赤い舌がザルディンのものを舐める。

「ナマエ…ッ」
『ン…』

ナマエのその姿にザルディン自身は快楽を示し始めた。

『あ、…ザルディン…』
「……ッ、お前がそんな顔をするからだ」
『可愛い』
「お前がな」
『わっ』

どさりとソファに押し付けられ、そのまま唇を重ねる。
その間にもザルディンの手がナマエのコート内に滑り込み、愛撫を施す。

『ア……っ!』
「…何度も抱いてるが…お前は処女みたいな鳴き方をする」
『そ、れって…どん、な…?』
「甘えてねだる声に、その煽るような姿に…何度理性が壊れたか」
『ケ、ダモノ…』
「お互い様だろ?」

ザルディンの指がナマエの肉壁を割って入り込む。
大きいその指にナマエは息を殺す。

「息を吐け。」
『は……っ』
「締まりすぎると抜けなくなる。抜きたくないなら別だがな」
『あ、ヤダ……むり…っ』

下からの圧迫感に堪えながらもナマエは小刻みに呼吸をする。

『最、初もそう…だったけど…』
「ん?」
『ザ、ザルディン…の、指も…おっきいから…苦し』
「………」

冷ややかな瞳でナマエを見つめ、中に入り込んだ指を引き抜いた

『ひァ……ッ!?』
「馬鹿者…」
『あ、や…ぁっ』
「今更止められなど出来ん」
『ザルディン……ッ!』

ぐちり、と粘膜が音を立てる。肉壁は、ザルディンの欲を締め付けた。

「く、」
『あ、あ…』
「ナマエ、締めすぎだ…ッ」

抱え上げられた足はゆさゆさと動く体に合わせて揺れる。

『ザルディン…、ザルディンッ…ちょっ…待って奥、まで…行かないで…ぇ……』
「ナマエ…ッ」
『あっ、ちょ……ん、は…』

飲み切れない唾液がナマエの口端を伝って流れる。
するりとザルディンの指が開ききったナマエの口に侵入する

『なはぁ、に……?』
「厭らしい口だ」
『ん、んんぁっ……!』

ナマエの舌を指で嬲りながら、ザルディンは肌に吸い付いた

『ざ、る…でぃん…、わ、私…もぉー…ダメ…ッ』
「…っ俺も、だ」
『ン、ふァ……!』

びくり、とナマエの体が震える。ザルディンは低く笑う。

「何だ、先に…達してしまっ、たのか…」
『ア、あ…っ…ごめ……!』
「まったく、本当に厭らしい……可愛、いから…許してやるッ…」

ズシリとした体の重みを受け止めたと同時に、体内に熱が走る。

『は……はぁ…』
「ん…う」
『ザルディンのほぉが…やらしいじゃん…』
「……?」
『顔、に…似合わず激しくて、今だって』
「?」

ナマエの手がザルディンの唇に触れる。

『……熱いし…?』
「…ッ、お前はまたそういう…」
『その顔だってエロいし、さ』

くすくすと笑うナマエを抱き起こすと体を擦り寄せてきた。

『ね、もっと…遊ぼ?』
「やはりお前の方が厭らしいじゃないか」

お互い笑い、唇を重ね合わせようと唇を寄せた。

「おいザルちゃーんあっそぼ…」

何の前触れも無く、入って来た人物はその光景に固まる。

「シ、グバール…!」
「な…に…して……」
『あー…バレちゃった』

愕然と立ち尽くすシグバールにナマエは笑いかけた

「…何してんだ」
『何って…セックスに決まってるじゃない?』
「そんな事を聞いているんじゃねぇ!何でザルディンとヤッてんだっつーハナシだ!」
『何怒ってるの?』

ナマエのその言葉にシグバールは目を見開いた。

『言っとくけど、私達は遊んでるの。邪魔、しないで?ね、ザルディン…?』
「………」

シグバールはただ黙って二人を睨み付けた。

『私、浮気したとか思ってないから』
「何だと…」
『何で怒るのか分からない。だってこれは、シグバールが今までやってきた事でしょ?』
「……」
『浮気癖が治らないシグバールに困ったから私は仕返ししようと思ったの。』

ザルディン自身を深々と飲み込んだままナマエは話を続けた。




イトハン