主の隣で眠る彼女は

『ん…』
「…おはようございます。」
『…あ、おはよ』
「寝癖、ついてますよ」
『あ、ウソ…恥ずかしいな…』


可愛いらしい人だ。

「…ドラグーン」
「はっ」
「ナマエを部屋まで送ってやれ」
『いいよ、ザルディン』

シーツを身に纏い、ベッドから起き上がる。ちらりと覗かせる肌は白く、細い。

「ナマエ」
『なに?きゃ、』

再びベッドに倒れ込む彼女は主の腕の中でもがく。

『ザル…っ、ドラグーンが…』
「…言う事を聞かないから」
『わかったわよ…送ってもらう』

逞しい腕からするりと抜け、脱衣所へと姿を消した。

「…お食事は如何致しますか」
「いい。後で食べに行く。ナマエを送ったら休め」
「はっ。ありがとうございます」

主は優しい方だ。
そんな主を俺は

『じゃあドラグーン、お願いしまぁす』
「はい」
『ザルディン、じゃーねー』
「ああ」

パタンと閉じられた扉。
不意に手に温もりが伝わる

「……何か?」
『送れ、なんて部屋まで遠くないのにね、ナイト様?』
「それ程貴方を心配しておられるのですよ」
『この城に悪者なんか来る訳ないのにぃ?』

繋がれた手が大きく揺れる。
彼女の部屋まであと少し。可愛いらしいプレートが飾られた扉が数メートル先にある。

『あ、ドラグーン…貴方に渡したいものがあるの』
「俺に、ですか」
『ええ。部屋まで来て』

カチャリと鍵の開く音が廊下に鳴り響き、扉が開く。

『どうぞ』
「…どうも」

扉を潜ると彼女の香りが鼻を掠める。
まるで彼女に包まれているかの様に優しい香り

「渡したいものって、」

扉に勢い良く押し付けられた体に鈍痛が走る
熱い刺激に一瞬何が起きたか理解出来ない。

「ナマエ、さま」
『は…ドラグーン……やっと…二人きりになれたね』

ぎゅ、としがみつく姿は生まれたばかりの赤ん坊の様で彼女の優しい香りが一層増した

『ドラグーン…』
「ん、」

絡まる舌が熱い。
まるで生き物のようにお互いの舌がしつこく絡まる
そう
俺は主を











『あッ、ぁ…ドラグーン…っ』
「ナマエ様…ッ」


裏切っている。


『や、は…』
「嫌、じゃないでしょう?貴方から誘って来たんだ…」
『もぉ…、主に似て…意地わ、るだね…』


久し振りの情交
主を裏切り続けて
俺達は繋がる

『あ…はぁ……んっ、う…』
「ナマエ様…」
『ドラグーン…』

縋る手を掴んでやり、華奢な体を抱きしめてやるとお互いの鼓動が伝わる

「締め、すぎ…です…っ」
『だぁ…ってぇ…!!』
「…主の様に、激しく抱い…て…欲しいんで、すか?」
『やだ…っ』
「ん…?」
『真似なんか…しなっァ、いで…よ…?』

顎を甘噛みされ、鎖骨部分に吸い付かれる。
その僅かな刺激でさえ快楽に変わる。

『貴方は…貴方なん…っ、だからさ…』
「…了解」

自分の鎖骨部分につけられた印。
彼女にもつけたいが

『ア…も、や……ッ』
「…ナマエ様…」

彼女は主のもの、なのだ
つける事すら許されない。……いや、本当はこうやって営む事すら許されないのだ

『ドラグーン…私も…お…!!』
「く、っ……」
『ひぁ…ッ!!』

熱い肉壁に達し、中に注がれた熱にびくりと体を跳ねさせた彼女の体を、きつく抱きしめる。

「すみ、ません…」
『…んー…?』
「抜く暇、なかった」
『いい…よ…』

主の恋人に自らの欲を注ぐなど
万一の事があれば大変な事になる
いつもは外に吐き出すが、今日は余裕がなかった

「しかし…」
『…大好きよ、ドラグーン』

赤い舌がちらりと覗かせ、誘う。
いつだって、彼女に翻弄されているのは俺自身、なのだ



*********



『もう行くの?』
「はい。あまり遅いと主が不審に思いますから」

折角纏った彼女の香りを、シャワーで洗い流す。
ひたり、と水を跳ねさせ彼女も風呂場へ入って来た。

「ナマエ様…?」
『私も…配下の一員だったらよかった』
「ナマエさ……っ!!」

屈み込み、足の付け根に吸い付かれ、思わず体を強張らせる
水に濡れ、下から見上げる彼女の姿は厭らしく映る。
口付けられたそこは赤い印を残していた。

「また変な所につけて」
『ふふっ』
「…こちらに座って下さい。出したもの、処理しますから」

浴槽の縁に座るように案内すると形のよい唇が孤を描く。

『またやりたくなったらどうするのかなぁ』
「その時は自分で何とかしますからご安心を」
『また抱けばいいのに』
「………」

小悪魔のように笑う彼女の手を掴み、浴槽に座らせる。

「足、開いて下さい。」
『うわぁ、何かすごく恥ずかしいんですけど…』
「なら目を閉じておられたらどうですか」
『貴方に見られるのが恥ずかしいの。』

濡れたその場をする、と指で撫ぜるとびくんと体が奮えた。
声を出さないようにしているつもりか、彼女は自らの唇をきつく噛み締めていた
そんな姿を見て理性が飛びそうになるがひたすら堪えた。

「…溢れてますね」

指を中に差し入れると卑猥な音と共に主のものと自分が出した蜜がとろりと溢れ出す。

『早く…出し、て…っ』

薄く開いた瞳で見られ、少し意地悪したくなった。

「ゆっくり掻き出さないと、傷ついてしまうので」
『ア…やぁ……っ』

わざと刺激するように中を掻き回すと肉壁が締まる。

『ドラグーン…っ』
「ほら、ちゃんと掴んでないと危ないですよ?」
『いじわる、しない…でぇ…』

ああもう、この人は。
何だってこんなに色っぽいんだ
主なら直ぐ様抱いてやるんだろう
自分だって抱いてやれば彼女は満足する。けれどそうはいかない

『やっ……ダ、メ…』
「………」


限界に達しそうなのか、足ががくがくと震える彼女ににやりと笑みを浮かべる。そのまま中に埋めこんでいた指を引き抜く。

『……ぇ…?』
「はい。綺麗に出せましたよ」

はたり、と彼女の足元に滴り落ちる白濁に指を差し、その場から離れ、再びシャワーを浴びる。
ちらりと覗き見れば不満そうな顔
「ナマエ様?」
『…意地悪』
「何がですか?」
『……っ』

下唇を噛み締め、照れを隠すように俯く彼女の顎を持ち上げる。

「…どう、したいんですか?」
『分かってるでしょ』
「言葉にしてくださらないと分かりません」

困った顔をして
一体どこまで煽ればいいのか

『ドラグーンの所為で…っ』
「ん?」
『…感じ、ちゃっ…て…』

見上げる顔は行為中の表情と同じで
その縋る様な顔をされればこちらが折れると分かっているのだ
しかしここまで来たら最後まで虐めぬきたい。

「…仕方ありません…」
『…ぁ……』
「じゃあ言ってください?どう、して欲しいか」

目を見開く彼女の太股を撫ぜると擦り寄せる様に体が密着する。

「…ナマエ様、…俺、もう行かなくちゃいけないんですが」
『あ……っ、うー…』
「……じゃあ」
『ッ…待って!』

ぎゅうと捕まれた腕。彼女のふくよかな胸が直に触れる。
何でこんなに計算をしないで誘うのか




イトハン