『あ…。まただ』

首筋や足の付け根、至る所につけられた薄くなっている赤い所有の印。

『…いつの間につけてるのかな…て言うかどうやってつけてるんだろう』
「よぉ!ナマエなーにしてんだー?」

踊り場にある鏡の前に立っていると背後からシグバールの声。

『シグ。おはよー』
「はよ。どーしたよこんなとこで鏡と睨めっこして。とうとう花野郎と同じ趣味を持ったのか?」
『違うよ…あ、うんとね。』

コートのファスナーを少しだけ下げるとシグバールは目を見開いた

「何?朝から俺を誘ってんの?」
『違う。コレ。』
「なーんだ。何?キスマークがどーしたよ」
『これってさどうやってつけてんの?』

そう言うとシグバールは目を見開き、声を上げて笑う。

『何で笑うのよ』
「お前キスマークのつけ方も分かんねーのか」
『悪い?』
「てーっきりあの紳士ヅラした悪魔に習ってると思ったのに」
『習うわけないじゃない…』

じりりとファスナーを上げ、溜息をもらす。
シグバールはニィ、と口端を持ち上げた。

『シグバール、教えてよ』
「へ?」

シグバールが話を持ち込む前にナマエに先に言われ、シグバールは首を傾げた

『何?』
「いや…別にいーけど」
『え、マジ?じゃあどうすんの』
「首、ちょいと傾けな」

言われるままに首を傾げる。何をするかと思えばシグバールはナマエに近づき、壁に押し付けた。

『シグバール?』
「まずは何処でもいいから口押し当てれ」
『押し当て…って何して…!』

ナマエの白い肌にシグバールは唇を押し付け、小さく囁き、舌を這わせた。

「で、吸えばいい」
『吸うって…あ…ッ…!』

急に吸い付かれ、その擽ったさにナマエは身震いする

『シグ…っ』
「…分かった?」
『ん、な、何となく…』
「ホイ。じゃあ練習。」

コートの襟を軽く引き、シグバールの引き締まった体がちらりと覗かせた。

『え、でも』
「初めてのまましたらルクソードが傷つくってハナシ。」
『傷…?』
「そう。歯型ついたりーとか。」
それは困る、とナマエは考え、意を決したようにシグバールを見つめた。

『う…』
(まあ、嘘だけど)
『じゃあ借りるよ』
「へいへい。」
『えと…唇押し当てて、吸う…』

ちゅう、と可愛いらしい音が鳴るとナマエは唇を離した

『こ、こうかな?』
「あー違う、こうだって」

再び押し当てられたシグバールの唇にナマエは体をぴくりと震わせる

『う…』
「軽く吸ってもいーけど、跡は長く残したいだろ?」
『ん、ぁ……うん…』

話しながら戯れているうちにナマエの首筋、鎖骨には多数の印がつけられる。
それから数分。

『こう!?』
「おー。そうそう。」

練習台になっていたシグバールの体にも印が数ヶ所出来た。

『よぉし!これでルクソードを喜ばせられるー』
「よかったなー」
『うん!えへへっシグバール、ありがとね!』

シグバールに手を振り、ナマエは足早に去って行った。

「さて。ルクソードんトコに行ってみよ。アイツどんな顔すっかなぁ」

くく、と低く笑い、シグバールは回廊を開いた。


*******

「よーおルクソード。」
「シグバール…」
「任務ご苦労さん」
「…何故帰って来て早々一番始めにお前の顔を見ないといけないのかな」
「いいじゃーん別に」

苦虫を噛み砕いた顔をし、ルクソードはシグバールの体につけられた印に気付く。

「…また任務の最中に何処で女を抱いて来たんだ?」
「あ?俺この一週間任務ナシー」
「……?」
「わっかんねぇ?身近に女がいるのにやっておかねーなんて勿体ないだろォ?」

その言葉にルクソードの眉間に皺が寄る。

「まさか」
「そう!そのまさか」
「貴様…消えたいようだな…」
「いやんルクちゃん怒んないでぇん!…けど言わせてもらうが俺から誘ったわけじゃないからなー?」

そう言い放つとルクソードは鋭い眼光でシグバールを睨みつけた

『ルクソード!』

バタン、と勢い良く扉を開けて入って来たナマエに二人は視線を向ける

『あれ?シグバール…何でここにいんの』
「いんやぁ?ちょっとなー」
「ナマエ」
『ルクソード、お帰』
「来い!」

初めて聞いたルクソードの怒鳴り声にナマエの体が思わず体がびくんと跳ねる。

「ありゃールクソード、あんまナマエを怖がらせんなよ」
「黙れ」
『ル、ク…?』

後退さるナマエに近付き、乱暴に手を引く。
手に走る痛みにナマエは顔を歪めた

『いッ……た、ルクソード…!』
「俺が任務に行っている間、相当楽しんだみたいだな?」
『え…?』
「シグバールはどうだった?俺より善かったか?」
『痛っ…ルクソード、痛い、よ!離して…っ!』

キシ、と骨が唸る音が双方の耳に届く
ルクソードの変わり様にナマエは涙を浮かべる

『何…っ、勘違いしてるか分かんないけどっ!』

ナマエは勢い良くルクソードに飛び付き、ルクソードの首筋に噛み付いた

「………っ!?」
『私はっ…!ルクソードに私の印つけたくてシグバールから習ったんだよ!』
「…おーい、ナマエ。それ修業の成果出てねぇよ。歯型、歯型ついてる」
『あ』

しぃんと静まり返る室内。ナマエは顔を真っ赤にルクソードを見上げるとアイスブルーの双眼がナマエを捕らえていた

「何故シグバールにもキスマークがついてる?」
『へ?練習台』
「そうそう」
「…お前は練習しなくてもいいだろうが!」
「くかかっ…お前のその紳士ヅラを歪めたかったんだよなぁ」
「…悪趣味な男だ…しかし本当にナマエに触れてないだろうな?」
「信用ねーな。ほら」

シグバールから手渡されたそれは小さな映像を示すディスプレイ。

『な、なにこれ!いつ映し…』
「…理由も原因もわかった。納得いくものを見せてくれてどうも」
「どーいたしましてェ」

にやにや笑うシグバールにルクソードは溜息を吐いた

「で?」
『え?』
「…何だ」
「今からやんの?セックスー」
『ちょっ!何言って…!』
「貴様はっ…!」
「ははっ!照れんなよ!じゃーなぁ!」

しゅわ、と回廊に逃げるようにシグバールは消えた。
沈黙が二人を包む。

『あの…ルクソード』
「…ナマエ。何故俺から習わない?」
『え、あ、だっ…だって…ルクソードから習ったら私きちんと出来ないよ…』
「何故?」
『だって…ルクソードの傍にいると何も考えられないもん』
「…困った子だ…仕置きが必要なようだな」

反転した世界。制止の声をかけるまでもなく、ルクソードはナマエの体を貪り続ける

(ナマエがルクソードにキスマークをつけれるのはもう少し先の話――)



END

Uと]どっち夢かごっちゃだ。


07. 01.17



イトハン