どこにいても欲情してしまう理由などいくつもある。
好きな女が隣に居るだけでもムラムラ来るのはわかる。


だからって、病人相手にムラムラすんのはいかんだろ、と思うワケで。


「大丈夫か」
『ごほっ……ん、んー…大丈夫、だよ…』
「何かいるか?」
『何も…』


ナマエが風邪でダウンした。
悪いのは俺の所為でもあるけど俺だけの所為じゃない。ほぼ全員が悪いと言っても過言ではない

「ナマエ、何か俺にして欲しい事はあるか」
『シグ…』

潤んだ瞳で見上げられドキリと心臓が脈打つ。熱が疼くが理性を押さえる。

「何だ…?」
『…部屋から…出てって…』

何を言われるかと思い、ウキウキ気分で聞き返す。しかし返って来た言葉はキスしろとか隣で一緒に寝てとかそう言うものではなく。

「な、何でだよ」
『風邪……感、染る…から…』

咳込むナマエがつらそうだと思うが病人を放っておけるわけがない
「俺が出て行ったら誰がお前の看病すんだよ」
『看病なん…か…いらないょ…』
吐息を零すナマエがまた色っぽくてついその姿に見惚れた

「俺ぁ馬鹿だから風邪なんかひかねーから安心しろ。」
『あー…自分で…ば、か…って認めた…』
「うるせ」

台所に行き、サイクスが持って来た大根をすりおろしたやつと蜂蜜を取る。
痛みの走る喉には普通の飯はきついという事で、ナマエに少しでもいいからこれを食べさせろ、とあいつからのせめてもの罪滅ぼし。

「ナマエ、起きれるか」
『んぇ……?』
「サイクスが持って来たもの、これ食って寝れ」
『ごほッ…あー…んー…わか、った…』

それに蜂蜜をかけ、軽く混ぜる。スプーンに一掬いし、ナマエの口元へ運ぶ

『シ、グ…自分で出来る…から…大丈夫だよ…』
「たまには甘えろ」
『あ…』
「ほら、あー。」
『…ん…』

たどたどしい動きで口を開くナマエの咥内に、スプーンを差し入れる。
拍子に、少しだけ口端につき、ナマエの指が拭う。その仕種に邪な事を浮かべるがそれを振り払うように頭を軽く振った。

「食べれるか?」
『ん…。のど、に…刺激がな…いから…』
「うまい?」
『うん…』

次をねだるように舌をぴょこんと出すナマエに我慢の糸がちぎれていく音が聞こえる。
ああ、やばい。限界が近い。

『シグ…?』
「あ?」
『ど、したの?』

スプーンを持ったまま固まっていた俺をナマエは凝視する

「いや、何でもない」
『うん…?』
「ほら、これで最後の一口な」
『あ、ん…ありがとー…』

カチ、とスプーンが歯に当たる。喉が上下するのを見て、ベッド脇にある棚へ空っぽの食器を置いた。

『シグ…ありがと』
「いや…少し寝んだろ?」
『うん…そうさせてもら、う』
「休め。俺傍に居とくから」

ナマエの手を握ると握り返される

『シグ』
「んー?」
『…本当、ありがと』

潤んだ瞳に少し火照った顔。頬笑む姿が極上。
ああもう!お前俺の理性を試してんのか、マジで襲っちまうぞこの野郎!

「あ、ああ…」

好きな女の極上スマイルに当てられた俺は
数時間後、幾分気分が良くなったナマエの風邪を再び悪化させる事になった

(つーか俺の欲情レベル低すぎだろ!)


END

続きます(笑)

07.1.26


イトハン