悪い毒なら解毒薬。良い毒ならご愁傷様。悪い毒なら解毒薬。良い毒ならご愁傷様。


からり、からり、からり

『砂糖は入れないの?』
「甘いの好きじゃねぇからな。いらねーよ」

白く細長い指がシュガーキューブを掴んでカップに放り込む。
赤い舌がれろりと指についた砂糖を舐め取り、カップを手渡された


「変わった砂糖だな。色がついてやがる」
『……珍しくて買っちゃったの。どうぞ』
「サーンキュ」
『ごめんなさいね、紅茶しかなくて…珈琲切れてるの忘れてたの』
「んや、たまにはこーいう洒落たモンでも構わねぇよ」
『似合わないわね、シグバール』
「そりゃドーモ。」

かちゃり、と陶器のぶつかる音が耳を通り抜ける。
二人は黙ったまま目の前の菓子に手を伸ばす。

「……ナマエ。」
『…何でしょうか?』
「なぁ俺の見間違いだったら引っ叩いてくれ」
『え?』
「お前が飲んでるの、珈琲じゃねぇ?」


シグバールはそのカップに指をさすとはにこりと頬笑んでカップをテーブルに置いた

『砂糖は如何?』
「いらねぇって。俺の話はスルーかよ」
『遠慮しないでいいのよ?』

ぽちゃん。
ナマエの手によってシグバールのカップに薄紫色したシュガーキューブが放り込まれる。
熱によって形を失ったそれにシグバールは眉を顰めた。

「この砂糖食えたりすんのかよ。毒とか入ってねーだろーな」


愚痴を言いながらもシグバールは砂糖が足された紅茶を喉に通した

『…そうね。毒は今入れたわ』
「……は?」

再びカップを手に、珈琲を啜りながらナマエはシグバールを見遣る

「何だって?」
『…ん…。…だから毒、今入れたわ。』
「はぁ?つーか俺、今飲んだってハナシ」
『そうね』
「解毒薬ねーのか」
『ないわ』

ナマエはカップを置き、シグバールの元へ近づく。

『大変ね、どうしましょう』
「棒読みだ。ナマエ、悪ふざけしてねぇで解毒薬出せ。」
『だから、ないの。』
「嘘つけ。」

ギシリ、と二人分の体重を含んだソファが悲鳴をあげる
ナマエはただ笑みを浮かべてシグバールの瞳を見つめた。

「ナマエちゃーん?俺は気が短ぇんだ」
『…知ってる』
「言わねぇと勝手に解毒薬の在りか、探しちまうぜ」
『ただ探しても見つからないと思うわよ』

くすくす笑いながらナマエは、お菓子持って来るわねと言いながらソファを立つ。

「だよなァ…」
『きゃっ!?』
「"ただ"探すだけじゃ見つかんねぇよな」

勢い良くナマエの手を引き、ソファへと体を押し倒す。目を見開いたナマエにシグバールはにやりと口端をあげた

「んじゃ、遠慮なく探させてもらうぜ」
『…っ、ちょ……!』

片手でナマエの華奢な両手を拘束し、開いた片手を衣服に忍ばせて滑らかな肌に手を這わせる。

「んー…ココでもないかなァ」
『やっ、ん……!』

胸に触れると同時にナマエの体が大きく跳ねた。
シグバールはただにやにやと笑いながら胸、腹、脇腹、背中と手を移動させた。

『シグ、バー…ルッ!離してっ』
「今、離したら俺の解毒薬探せなくなっちまう」
『ん……っぁ……』

かちゃりとベルトを外し、それをナマエの両手に巻き付けるとナマエは目を見開いた。

『ちょっと!やめ、て…悪戯も度が過ぎてる!』
「最初に悪戯したのはお前だろ」
『ごめん、悪かったからこれ外して!』
「…駄ー目…だ……。いい子にしねぇと犯しちまうぜ」

耳元で一段低い声で囁き、首筋に舌を這わせるとナマエの体が強張るのをシグバールは感じ取る。
泣くか?て思い冷めた瞳で見上げると顔を真っ赤にし、唇を噛み締めるナマエの姿。

「…そうそう。いい子にしてな」
『……っ』

ナマエの履いているズボンを引き下げ、全てを露にするとさすがにナマエは驚く

「悪いなぁ。ちょーっと調べさせてもらうぜ」
『……やだ…、シグバール…こんなの…』
「口開けてみ」
『え……?ん、むっ』

シグバールの指がナマエの熱い舌を絡めが取る。
ナマエの唾液で濡れた指で舌を翻弄すると、は、と甘い吐息が漏れる。
するりと舌を開放し、その指を微かに濡れたその場に埋め込んだ。
『んっ………ァ…!』
「入口には…ねぇな…。もっと奥か…?」
『ひゃっぁ…!』
「ココか…?いや、違うな…ココかなァ…?」
『やぁっ…!シ、グバっ…ル…!やだっ!!』
「何がだよ?俺は"解毒薬"を探してんだぜ?」

くつくつと肩を揺らし、零れた唾液を拭う。
濡れた瞳がシグバールを捕らえたがシグバール本人は熱を含ませた瞳から直ぐに目を逸らした

「ったく…」
『解毒薬なんて…っ、な、い…毒もっぉ…嘘、なの…ッ!』
「へーぇ?」
『あっん!』

引き抜かれた指はぬめりを持ち、シグバールはそれに舌を這わせて舐め取った。

『だ、から…もう…これ外して…』
「……」
『…シグバー、ル…?』

ぐい、と脚を持ち上げてナマエの顔を見遣るとナマエの表情が曇り始める

『うそ』
「嘘じゃねぇ。ナマエ……」
『ん……むっ』

怯えた目を向けるナマエにシグバールはキスを送る。絡められた舌を合図にシグバールは自身を埋め込んだ

『んん――…!?』
「ん、……は……」
『なっ……ん、何…してるの…よっ』
「くかか…解毒薬あんじゃねぇーか」
『…っえ…?ア、っんん!』

ナマエは何の事か分からない、という顔をし、激しく揺さ振られる律動に甘い声を漏らした

『なっ…ぁ!なん、の…ぉ、事ッ言って…』
「…お前だ、ナマエ…っ」
『ふ…ぇ……?』
「お前が俺に盛った毒って…"愛"の毒…だろ…?」
『は……ッア…?』
「ま…、俺の"ココ"の解毒薬はお前しか…いねーよ」
『ば、かッ!』

深く繋がったままシグバールは淡々と言い放ち、ほくそ笑んだ

「まったく…厄介な毒飲ませやがって」
『だかっ…ら、飲、ませてなっ、んぁ…いッ……!』
「飲ませただろ。責任取れよ…?」

深いキスを送るとシュガーポットに入ったシュガーキューブがからり、と音を立てる。
シグバールは視線を向けたが興味なさそうに視線をナマエを戻し、腕の中に閉じ込めた。
これが愛の毒なら消えないで欲しいと頭の隅でボンヤリと考えながらナマエと眠りに落ちた。


明日も明後日も、毒は消えない

(悪い毒なら解毒薬。良い毒ならご愁傷様。愛の毒なら消えないで)


END

こちらも拍手で承ったリクエスト夢です。
シグさんある意味、強かn(黙りゃい)
とりあえず解毒薬はお前だよ、みたいな意味不明なクッサイ事を書きたかったわけで気付いたらおかしな作品が出来ましたと言うハナシです
ここまで読んで頂きありがとうございました


07.7.30


イトハン