見て、いますか
届いて、いますか?
ほしぞらを、その輝きを
煌めきを
瞬きを
貴方は、見て、感じていますか


いつか貴方が愛した景色を


「ナマエ様」
『ギャンブラー?どうしたのこんな夜中から…寝れないの?』
「…いえ…」
『…こっちにおいで』

彼女は読み掛けの本を閉じ、眼鏡を外してテーブルに置く。その些細な動作は、とても惹かれるもので、ついつい見入ってしまう。

『座って』
「…はい」

ギシリと軋むソファの音。それが耳に大きく響く

『どしたのかな?』
「……」

ただ黙る事しか出来なくて、下を俯いて拳を握る

『…ふふ、待ってて?』

キッチンへと消えた彼女を目で追い、からりという音に首を傾げる

『ほら、飲んで』
「あ…」
『甘口にしたレモネード、飲めたっけ?あ、熱いから気をつけてね』

暖かなソレでこくりと喉を潤すとレモン独特の酸味が口に広がるがそれを中和するように程よい甘さにされ混ぜられたハチミツが後に口に広がった。

『寝れないの?何か、心配事?』
「…何故か…貴方に、会いたくなって」
『そっか、ありがとう』

頬笑む彼女は、前にマスターに見せて貰った本に載っていたマリア像に似ていて、それを思い出すとまた不安が広がった

「…何処にも…行かないでください」
『…行かないよ』
「貴方が居ないと…我々は」

ぽつ、と手に持ったレモネードに雫が落ちる
涙など流す心なんてないのに、あるはずないのに

『泣かないの』
「すみ、ませ…ん」
『キミは優しい子』
「……」
『でもまだ幼い』
「…はい…」
『ほら、飲んで落ち着こ?』

涙を拭いてくれる手が暖かくて、笑う彼女の笑顔が切なくて、愛しくて

『…キミ達には笑っていてほしいよ、ギャンブラー』
「はい…」
『それが私にとって一番の宝物』

うなだれるように、体を預け
誘われるように、瞳が閉じかける
目を閉じてしまえば、貴方は居なくなってしまう
けれど、目を閉じてしまえば貴方が笑って傍に居てくれる姿が浮かぶ

撫でてくれる手が心地よくて

『…おやすみ、ギャンブラー』

私は夢を見る


見て、いますか
届いて、いますか?
ほしぞらを(我々を)
その輝きを(笑顔を)
煌めきを(喜びを)
瞬きを(祈りを)
貴方は、見て、感じていますか





「ナマエ様」
『ギャンブラー?』
「貴方が、望んだ景色は」
『私が愛した景色は実現されたのね』
「…ここは冷えます、部屋に戻りましょう」
『レモネード、作ってくれる?』
「…仰せのままに」

いつか貴方が愛した景色を壊されないように
貴方の、為に
貴方の為なら
幾らでも笑っていましょう
何時までも、いつまでも


END

情緒不安定なギャンブラーとそれを支えるナマエさん。
意味がわからなくなった!

07.7.16


イトハン