情事後の気怠さと共に瞳を開けると薄暗い琥珀色のランプと同じ色をした、喉を潤す液体が目についた


『…何…飲んでるの』
「…あぁ、起こしたか、ナマエ」
『ん……』

私は彼の暖かく大きな手で頭を撫でられるのがスキだ。
彼は私を猫を撫でるように優しく撫でてくれる。

「眠いなら眠れ」
『うん…』

からり、とグラスに入った氷が音を立てた。
彼の手を、彼を占領するのは私のはずなのに片手はグラスが占領している

『ザルディン…』
「ん…?」
『寝ないの?』
「寝るさ」
『…お酒飲んでるのに?』
「寝付きを良くする為さ」

喉が上下するのを見て、その喉元が妙に色っぽく感じた。

『…美味しそう』
「飲むか?」
『違う』
「ん?」

気怠い体を起こすとギシ、とベッドが軋む。のろのろと布団から這い出し、彼の膝上に跨がる。

「……ナマエ」
『…なーに?』
「眠れ」
『やぁだ』

笑いながら肌に吸い付くと片手に持っていたグラスがサイドテーブルに置かれるのが視界に入った。

「…煽ってるのか」
『んー…したい、な』
「そんな体力ないぞ?」
『嘘ツキ。…"元気"じゃん』

耳元でそう呟くと大きな手が腰に回される。
腰から背中にかけゆるゆると滑る指は、何かを期待する印。

「そうでもないが?」
『どぉかなぁ…』
「厭らしいな、ナマエ」
『ふふ、誰の所為…?』
「さぁ、誰の所為だろうな?」

ちゅ、と可愛いらしい音をたてたキス。
薄暗いランプは彼の顔を厭らしく照らす

『入れていい?』
「…駄目だ」
『何で』
「酒を飲んでしまってるからな…止まらんくなる」
『じゃあ…止まんないで』
「おい、ナマエ」

半勃ちになった彼自身を掴み宛がおうとした瞬間、視界が一転した

『え、え?』
「…慣らさないと痛いだろう?」
『あ…え、と』
「本当にどうしたんだ?今日は」

むにむにと頬をつままれ、擽ったさに自然と笑い声が零れた。

『だ、って…ザルディンが色っぽかったし』
「俺が?冗談はよせ」
『…お酒のグラスがザルディンを占領したから』
「………」
『だから今度は私が、主導権握るの』

零れんばかりに目を大きく見開いた彼は固まったかと思えば笑い声をあげた。

「クックッ…」
『な、何で笑うの!』
「本当…お前は可愛い奴だなナマエ…」
『んッ!!』
「ん……」

キスと同時に与えられた下腹部への快楽に飛びそうになる。でも何とか堪えて舌を絡めた

「は…ナマエ…」
『ザルディ、ン…早く…』
「焦るな…せっかちだな。主導権握るんじゃなかったのか?」
『ん、そ……だよ…』
「その様子じゃ今回も俺の勝ち、か?」
『!』

耳に残る吐息が熱い。囁かれた声に力を奪われる。
けれどいつも通り、なんてのは許さない。許せない。

「ん?」
『きょ…は、私が…主導権握るんだから…っ』
「…っと…!」

厚い胸板を押し、組み敷くと深々中と入り込んでいた指がズルリと引き抜かれた

『っんァ…!』
「…なら、お前が俺を翻弄してくれ」
『…む、むかつく!絶対後悔させてやるー…』
「どうかな」

既にはち切れんばかりに大きくなった彼自身を軽く掴み、今度こそ、と、ゆっくり自分の中へ埋め込んだ。

『ア……く…』
「…大丈夫か…」
『よゆっ…う、よ…』

本当は苦しい。でもコレは彼が私に感じてくれた証だ。
彼の期待にちゃんと応えたい

『は、ふ』
「動くか?」
『ダメ…私が、主導権…なん、だから…』
「そうか…なら、動いてくれ」

優しく頬笑み、刺激を与えないようにと体を抱き締めながらゆっくり起き上がる彼。
背を撫でられ、安堵するけどもそれと同時に与えられた暖かい手の温もりが更に安心させた。

『んぁ……ん、んっ』
「…ナマエ……」
『ぁふっ…あ…、も…本当お、きいんだから…』
「どうも」
『褒めてな、い…ッ』

膝を折り曲げた状態で何度も腰を引き上げると卑猥な音が部屋に響く。それさえも快楽に変わった。

「…ッ、締まったな…」
『あ、ぅ…んぁっ…』
「焦れったいぞナマエ…」
『ふ……ぇ…?』
「主導権はどうした」
『ちゃ、んと…ぉ、握るも、ん』

息絶え絶えな状態。だが彼はまだまだ余裕だと言わんばかりの頬笑み。その余裕さに少々焦りを感じた
彼はまだ快楽を感じていないのだと。

『ザ…ルディン…、ま…だ…気持ち、良くなぁ、い…?』
「…何だって…?」
『だって…っ…は……余裕ヅラ…かまして、る…から…気持ち良く…ないんでしょ…?』

いくら頑張っても気持ち良くなってるのは私だけだ。どうすれば、彼を満足させてあげられる?
ぐるぐるした意識の中で必死に考えてると再び勢い良くベッドに押し付けられた
勿論、中に入り込んでいたものは容赦なく中を刔る

『ッあ…、な、に』
「余裕なんてない」
『やっ!ちょっと…っ』
「第一そんな顔をしたら…お前に主導権を握られてしまうだろう」
『…え……っ?』

きつく抱き締められた体は熱でもあるんじゃないかと言う程熱かった。
次第に激しく突かれる体は脳の機能を停止させ始める

「どれだけお前、に…感じてると思っているんだ…?」
『んんっ、あ、ふっ…!』
「お前に…主導、権を握られる、と……、困る…」
『ひゃっ…あ、あ』

囁かれた声は余裕なんてなく。私もただ喘ぎながら彼の背中に爪痕を残す事しか出来ない

「色っぽいのは…お前だ」
『あ、ンぁッ!!』
「…後悔させられたのは…お前の方、だったな…ナマエ…ッ」

違う、と言おうとした言葉は言葉にならず、変わりに彼の唇が押し付けられた。
何度も抱かれた後に開放された私は痛みに悲鳴をあげる
彼は「お前が悪い」とか「忠告しただろ」などと言いながらもきつく抱き締めてくれた。
暖かな熱と、心地良い鼓動のリズムに私は再び眠りに就いた


(翌日、蝕む激痛が襲う。もちろん誰かさんは知らん顔)


END


無駄に長くなった(笑)


07.09.12


イトハン