かち、こち、と秒針が時を進める
もう、夜中か。ソファに腰掛け、読み掛けの本を閉じた。
大きく開けられた窓から、月明かりを見ながらつい先程入れられた紅茶を啜る。

『まだ、かな…』

風に靡く白いカーテンがふわりと揺れ、秒針の音が眠気を誘う。

『……』

このまま月の光に当てられて寝てもいいだろう
満月が、ナマエの体を照らす。
限界まで来た睡魔がナマエを夢の世界へ連れて行くまで時間はかからなかった。


バサッ。


その音と、体を冷やす風の冷たさに目を開く。
あのまま寝てしまったのだと今だ覚醒しきれていない頭で考える
ベッドに戻って休もう。そう思って開いた窓を閉めるべく立ち上がる

『綺麗…』

そう呟いた瞬間、背中に暖かな感覚が与えられた
望んでいた温もりにナマエは小さく声を漏らす

『ザ、ルディン……?』
「…遅くなった。」
『お帰り…なさい…何処から入ったの?』

ナマエを抱きしめていた大きな手が、目の前の窓を指差す。
ああ、先程の強い風は彼だったのか、とナマエは頬笑んだ

『起こしてくれればいいのに』
「…気持ち良さそうに寝ていたからな…起こすのも悪い気がした」
『別にいいのに』

絡まる腕を解き、窓の扉を閉めようと手を伸ばすが、その手が捕まれて体をこちらへ向かされる

『…ザルディン…?』
「……行くな」
『?』
「外に…手を伸ばすな。…連れて行かれそうだ」

冷えた体が、彼の熱を奪い取る様に暖かくなる
長い事触れられていなかった体は僅かな刺激にドキリと脈打つ。

『ザルディン…どーしたの』
「いや…」
『ほら、もう寝よう?』
「………」

あやすように体を引き離そうと胸板を押すと後頭部に回された手が髪の毛を彼の指に絡めて、引き寄せられた

『ザ…っ』
「ナマエ…」
『ん、んん!』

荒々しいキスに思わず息を飲む。苦しく、呼吸をしようと酸素を求めるが奥深く侵入された舌がそれを許さない。

『はっ……ふ、ぁ』
「ん…」

堪能した、とでも言う様に舌が唇をなぞり流れ落ちた涙をべろりと舐め取った。

『は…はっ……』
「…その様子では…浮気していないみたいだな?」
『当たり…っ、前…で、しょ…』
「残念」
『え…?』
「浮気などしていたならば…散々鳴かせると言う理由でお前を抱いたんだがな…」

濡れた唇を親指で拭う姿にドキリとする
月明かりに照らされ、それが妙に妖艶で、艶かしい彼を一層際立たせた。

『…す…るの…?』
「あぁ」
『溜まってる?』
「さぁ、な」
『浮気したから溜まってない、のかな?』
「する訳ないだろう?」
『どうかな…』
「ならば試そうか」

ぷち、ぷちと服の釦が外される。その間に自分は彼のコートのファスナーを下げて、その広く厚い胸板を露にする

『ん…寒、い』
「今から暑くなる」
『……えっち。』
「ふん」
『否定しないんだ』
「あぁ」

彼の服を剥がすより先に、自分の着ていた服が全て、ぱさりと地面に落とされた。

『さむ…』
「手、止まってるぞ」
『だって擽ったい』
「そうか」

顔が首筋に埋められ、するると肩を伝って下へ下へと流れ落ちて行く。指先を軽く噛まれ、慌てて両手を上げてしまう

「…どうした…?」
『べっ、別に…』
「しっかり立っていろ。」

片脚を肩にかけられ、下腹部の膨らみを熱い吐息がかかり舌がなぞる
途端、支えている片脚の力が抜け、座り込んでしまいそうになるが大きな手が腰を支えた。

『んぅ、ン……!』
「…ん」
『や、ザルディン…ッ』
「気持ち良くないのか…?」
『ちが…う』
「なら素直に感じてろ」
『ッあ!!』

いちいち舌の動きに反応して体が震える。まるで打ち上げられた魚のようだと思いながら、彼の束ねられた髪の毛に指を絡める。

「ナマエ」
『は…ふァ』
「ナマエ。」
『んな、ぁに…』
「"飛ぶ"なよ?」

言っている意味がわからず、それでもって彼が自分の指を舐めている事など知らずに必死に息を吐く。

「ナマエ」
『ん…っ?』
「俺を見ろ」
『な、に?』

紫色の瞳がじっと見つめる。
恥ずかしさに目を逸らそうとするが「逸らすな」と言われ、涙が零れ落ちそうになりながらも見つめ返した。
瞬間、にこりと笑んだかと思うと蜜壷に異物感を感じた
突然の出来事に信じられないという視線を向けた

『ッ……んぅ…!』
「…いい顔だな」
『あ、く趣味…っ』
「写真でも撮ればよかったな」
『何言って…あぁっ!』
「とてもいい顔をして…いい声で鳴く。」

太い指が遠慮なしに中を好き勝手に掻き回す。
弱い個所を擦りそうな位置でわざと避けて違う場所で指が暴れ回る

『んぁ…は、ぅ』
「足りないか?」
『ん…っ、ん』

情けないが、体は正直とよく言ったもので問い掛けに首を縦に振る。
指が奥まで入れられるかと思いきや、一気に引き抜かれ再度腰が抜けそうになる

『ザルディン…?』
「俺より指がいいか?」
『ヤです…』
「素直でいいな、ナマエ?いつもこう素直だといいんだが」
『ばか…』

宛がわれた熱に息を飲むが降り注ぐキスに安堵する。
小さな声で侵入を許可する合図を送ると容赦なく入り込んできた。

『ひぁ!!』
「く……」
『あ、あ…くる、し』
「締めすぎだな…」
『おっきすぎ…なんだよ』
「それだけお前に欲情しているんだ」
『なっ…も……ぉっ!?』
「悪い、な…?ゆっくり喋っている程の理、性は…持ち合わせていない…」

がくがくと揺さ振られ、自然に声が溢れ出す。
不意に何かを囁かれ、視線を向けるとその先には二人を照らす月。

「な?見られている、だろう…?」
『やぁだ…ぁっ…』
「声、も…体も」
『ひゃっう!んん!』
「あまり大きな声で鳴くと…っ、他の奴らに聞こえるぞ…?外にも響く…」
『そ、させてるの…だれっ…』
「俺だけどな」

激しく求められ、荒々しいキスに呼吸が追い付かない。
体はただただ突き上げられ、自らの体重で彼を深く飲み込む。

『ザ、ルッ』
「……ん…?」
『もっと…キスし、て』
「…息が詰まる程…してやる」

軽く触れたキス
きつく抱きしめられ、深いキスに変わる。
ギャラリーに月を迎え、彼は見せつけるように体を貪る

「…ナマエ」
『ざるっ…でぃ……ん!!』
「………る…」
『…ふ、え?』

快楽に浸りすぎて何を言ったのか聞き取れず、一番弱い所を突かれ体がびくんと跳ねたと同時に、目の前が白い月と同じ色に染まった

荒い呼吸を繰り返し、ただひたすら彼に


"おねだり"


をした。


(ねえ、おねがい、わたしに
触れて、
抱きしめて、
キスを頂戴
)


END

ザル様が獣城でニヤリと笑う顔が素敵という映像から出来上がりました(笑)

07.12.3



イトハン