一目見て固まった。
二目見て心がないはずの胸の内が踊った。
再三会って、欲しいと思った。
彼女が俺を憎んでいると分かっていても彼女を欲しいと思った。


『はぁ…はぁ』


暗い闇――彼女へと示す赤い血溜まり。
一歩、また一歩と歩く。

『…早く…出なきゃ……闇に飲まれる…』
「手遅れだ」
『!』

振り返るその姿に手を伸ばしたくて更に歩みを早めると彼女の周りにシールドが張られた。

『闇の住人が…気安く触らないでッ』
「…随分と嫌われたものだ。ナマエ、我々の仲間になる気はないか?」
『ないって言ったでしょ!』
「俺の傍に居てもらいたい」
『なら…尚更嫌よ!!』
「!」

ナマエのかざした両手から冷気が放たれる。
瞬時にかわすと距離を縮められ、目の前に短剣が突き付けられた

「物騒なものは仕舞ってくれ。ナマエ、お前とは戦いたくない」
『なら私に構うのをやめて。ここから出して』
「お前が出たいと願うのなら回廊は口を開く。一向に開かないと言う事はここから…」
『うっ、ぐッ!』
「出たくないと言う事だろう?」
クレイモアの柄部分で思いきり殴りつけるとナマエの身体は地面へと叩き付けられた。

「ナマエ」
『げほっげほっ!ち、かよら…ない、で』
「まだ抗う気力があるか…」
『…っ』
「ますます欲しい。」

距離を縮めるとナマエの周りに先程のシールドが張られた。
正直、邪魔だ。
俺とナマエを阻む壁。
それは、俺を拒絶する壁。

「こんなもの…」

破壊して

『散れ!サイクスッ』
「消してやる」

バリン、と硝子が割れた音が闇の中響く。
目の前にはナマエが立っていたはずなのにナマエはいない

「…幻術を使うとは…」

自分の滑稽さに、笑いが込み上げる。偽物の、作りものの。
一枚上手だった相手に拍手を送りたいと思った


******

『上手く、引っ掛かって、くれたかな…』

暗闇を走り、光へと向かう。
ナマエはただ走った。

"ナマエ!"
『…!みんなの声だ!』
"こっちだよ、ナマエ!"
『みんな!』

ぱんぱんと手の鳴る方へ誘われるように光に足を踏み入れた瞬間、ナマエの身体が暖かい何かに包まれた

『……え…?』
「捕まえた」

顔を上げると先程まいたはずの

『サイ、ク、ス…!!』
「今日は見逃してやろう。だが次は」

柔らかな髪の毛自然とに指が絡まる。絹糸のようにしゅるり、しゅるりと。
誘われるように、驚愕したままのナマエに口付けた

『ッ!?んー!!』
「――っ」

口の中に広がる血の味。噛まれた舌の痛みなど気にせずナマエの後頭部を押さえ込んで唇を貪った。

『っ、ん、む!』
「は……」
『やめ…っ』

荒くなる吐息に目眩がしそうになる。
睨み付けられた瞳は潤んでいてそれはますますそそられた。

「は…、必ず手に入れる」
『ちょっ…何す、る…』

暴れるの両手を片手で押さえ、白く細い首筋に唇を当てて強く吸い付いた

『ヤっ…!?何してんのよッ!』
「…これが、消える頃までに」
『…!?これっ…何て事するのよ!』
「必ずお前を手に入れてやる。」

どん、とナマエの身体を押すと尻餅をついてまばゆい光の先でただ目を見開いていた。――首筋に残る痕に触れたまま。

『だっ…誰がなるものか!次に会う時は消してやるんだから!』
「ほう、楽しみだ。お前から逢瀬の約束をしてくれるとはな」
『〜〜ッ!!』

まだ何か叫んでいたナマエを放って回廊を閉じ、また闇の中を歩く。

「…らしくない。」

手についたナマエの血を見つめ、ぺろりと舐める。
ただの血のはずなのに身体が震えて、先程別れたはずなのにもうナマエに逢いたくなったなど。

「……甘い。お前の血は甘いな、ナマエ。お前自身は、もっと――」

に、と口端を歪め次に会ったらどう相手してやろう、と考える。

「さて、次はどうやって狩ってやろうか」


END

緋蝶さまリクエストで7夢です
先に言っておきます…大変遅くなりました!そしてクレーム&返品可能です…!リ、リクエスト通りになっていますでしょうか…!
もうちぐはぐな展開ですみませんすみませんすみません!殴ってください。7を(こら)
緋蝶さまに捧げます!リクエストありがとうございました!



イトハン