最近気付いた。
彼は異常な程の愛を含んだ目であたしを見つめる時がある。それは嬉しいと同時に

少し怖い――。

いつもの談話室で私はザルディンと話し込んでいた。
任務の話や、世界の話、お互いの過去やこれからどうなるか、なんて未来の話まで。
そんな他愛ない話を二人で飽きる事なく毎日していた。

『でね、その指輪の形がすごく好きで、買おうと思ったのに売り切れちゃってたんだ』
「運が悪かったな」
『だよね、私本当に運が悪すぎ。』

ザルディンは私の話す事をきちんと聞いてくれる。
他の人は彼の事を聞く耳持たない、とか、余計な話をしない、とか、怖い、とか言う人が数名。
ザルディンと昔から一緒に居る人達はそうではないみたいだけれど。
話してみるとこんなにも優しい。

『ね、耳痛くないの?』
「もう慣れたな」
『触ってもいい?』
「あぁ。引っ張るなよ」

ソファーから立ち上がり、ザルディンに近付くと紫の瞳が見上げてきた。
珍しい目の色だからついつい見入ってしまう。
そっと耳に触れると彼は滅多に見せない頬笑みを私に向けた。

「満足か?」
『うん。すごい、これ中にボディピアス挟み込んでるんだね』
「慣れるまで大変だったがな」
『ふふっ、あいたたーとか言ってるザルディン想像出来ない!』
「ナマエは開けないのか」
『うーん、痛そうだしなぁ』

そう言いながら束ねられた髪の毛に触れていじっていると、そういえば距離が近い、と感じた。勝手に髪の毛を触ったり。
彼は触れられる事を嫌っていたはずだ。だからさっきも了承を得て耳に触れたのに。それを思い出し、ぱっと手を離した。

「ナマエ?」
『ううん、何でも!ねぇザルディンの話聞かせて!昨日の任務とか』
「昨日…昨日は確か…」
『え、忘れてる?歳だよそれ』
「…失礼な奴だ」

少し拗ねたような彼の顔に、胸の中が擽ったい気持ちになった。
ムキになるのが可愛いなぁと思っていると扉が勢い良く開いた。入ってきたのは若者3人組。

『あーアクセル、デミックス、ロクサス』
「あっれ〜ナマエ、と…ザルディン?」
「めっずらしーな。オッサ…ザルディンが人と話してるの」
「アクセル、それってザルディンに失礼だろ」

一気に騒がしくなった部屋に苦笑し、ちらりとザルディンを見ると彼は珈琲を啜っている。
少し、困ってるような顔、してるなぁ。そう思いながらあるものに目が行った

『あー!』
「!?」
「なっ何!?」
『デミックス…それ…!』

デミックスが持っていたソレ、は私が欲しかった指輪。
小指にはめられたソレはきらりと光を放っていた。

「これ?いいでしょー」
『いいなーいいなぁ!私が欲しかったのに』
「買う気だったんだ?」
『うん』
「お前ら趣味悪いなぁ」
「うるさいなーまぁアクセルにはわかんないでしょ」

ぎゃあぎゃあ言い合う二人を見ながら最年少のロクサスは私達のテーブルに置かれた茶菓子をつまみ食いしている。

「ナマエこれあげるよ」
『えっ!?ほ、本当!?』
「うん、別にいいよ〜ナマエが欲しかったんでしょ?」
『でも…』
「はい、じゃあデート1回ね〜」
『ザルディン見て!』

デミックスは私の指に指輪をはめてくれた。私は指輪が手に入って嬉しかった。ザルディンに見せると彼は笑った。
――冷たい瞳で。

『ザルディン?』
「…よかったな」

がたんと椅子から立ち上がり、回廊を開くもんだから慌てて追いかけた。
辿り着いた先は彼の部屋だった。

『ザルディン?どうしたの?五月蝿かった?』
「ナマエ」
『ん?』
「…お前は卑怯だ」

そう言われたと同時に身体に痛みが走り、すごく近い場所に、そう、目の前にザルディンが立っていた

『な、に?』
「他の男から指輪を貰えて嬉しそうだったな」
『え…あ、だ、だって欲しかったから…』
「…俺は危うくデミックスを消すところだった」
『え…』
「割り込んで来たかと思えば、お前に近付いて興味を引き、お前に触れた。」

掴み上げられた手首が痛い。彼の目が、あの異常な目をしている。
怖くなって、目線を逸らすと首筋に顔を埋められた。

『!!』
「俺のものなのに…お前も他の男を見て誘う…」
『違うっ…誘ってなんか…』
「…このまま、お前を辱めたらお前は俺を避けるか?」
『ザ、ル、ディ……ン…?』

怖い。彼の目が、私の名前を呼ぶ彼が、彼の存在が。恐怖心から身体が震える。それを感じ取ったのかザルディンは頬笑んだ。
しかし、目は、笑っていない。

「ナマエ」
『な、なに』
「指輪を渡せ」
『…え…』
「指輪を渡せと言ったんだ。指をへし折られたくなかったら、指輪を渡せ。」

恐ろしい言葉をさらりと言ってのけたザルディンは掴んでいた両手に強く力を込め始めた。
両手を物凄い力で握り締められて痛みに自然と身体の力が抜ける。

『イタ、イッ…ザルディンっ!離して!』
「ナマエ。言う事が聞けないのか」
『だってっ…これ…!何でこんな事ッ…』
「…お前を愛してるんだ。だからそれは邪魔だろう。他の男から貰ったものなんて」

首筋に当てられていた唇が上へと這い上がり、耳朶を口に含まれた。
そのうち思い切り噛み付きそうな甘噛みに、ただひたすら謝った。怖くて、体が震えて涙が溢れ出る。

『ご、ごめんなさいっ、ごめんなさい…!』
「…いい子だな、ナマエ。指輪を渡せ」
『っ…ひっく…』

外された両手首にはくっきりと痣が残っていて一気に身体が崩れ落ちた。
それを支えるでもなくザルディンは回廊を開いて指輪を投げ捨てた。
金属独特の音が辺りに鳴り響いた

「もう泣くんじゃない。あまり俺を煽るな。」
『…っ、』
「指輪の変わりに俺からお前に贈り物をしよう。何がいいか…ふむ…」

ぼたぼたと流れ落ちる涙を拭う事も忘れて私は逃げようと座り込んだ状態のまま後退りする。
不意にザルディンが自分の耳に手を当て、そして私の耳元に手を当てた。

「お前にはピアスを、やろう」
『や…、いや…』
「ナマエ、大丈夫だ、一瞬だから」
『いやっ…!!』

ブツリ、と音と共に耳に重量感。耳が熱い。痛みに顔を歪めるとザルディンは嬉しそうに頬笑んで指についた私の血を舐め取った

「もう俺以外の奴から、何も貰うな。欲しいモノがあるなら何でも与えてやる、だから」

彼が私を異常な目で見つめる理由が分かった。
彼は私に関わる全てを嫌っていたんだ。そしてその全てがなくなったら、と考えていたのかもしれない。
あの異常な程、冷めた瞳で。

「俺を嫌うな…」

そう、それは嫉妬。その感情の所為で彼は狂い始めたのかもしれない。
ううん――、狂った。知らないうちに私がそうさせたのしれない。

「ナマエだけだ。俺を理解してくれる者は…」
『ザル、ディン…』
「愛している、ナマエ…だから俺を見捨てるな…」

枷をはめられた私はもう


逃げられない。


END

小夜さま大変お待たせいたしました!小夜さまリクで狂愛3氏夢でした
て言うか狂愛3氏になってるか心配だ…!
返品可能ですー!リクエストありがとうございました!



イトハン