台所に溜まった食器を片付けしなきゃ、そう思い台所に向かう…が、はっと思い出した。

『しまった、報告書…!』

昨日渡すはずだった指導者への任務の報告書。
疲れてしまって渡しに行けなかったので今日渡しに行こうと思っていたのに。
お茶会を開いた所為ですっかり忘れていた。

『あっちゃ…まだ居るかな』

扉を開けて確認するが既に姿は無く、ナマエは報告書を持ってゼムナスの部屋へ向かった。


******


控えめにノックをすると返事が返って来た。
ナマエはゆっくりと扉を開いた

『すみません…失礼します』

中に入ると着替えの最中だったらしいゼムナスが立っていた。
逞しい身体に自然と視線が行く。ばちっと目が合ってしまいナマエは慌てて視線を逸らした。

『あの、昨日までの長期任務の報告書です。お渡しするのが遅くなりました』
「ああ」
『……』
「……」

沈黙が気まずい。流石に、いくら憧れている人でも二人きりになると何とも言えない空気が漂う。

『あの…じゃあ私、これで』
「ナマエ」
『は、はい』
「洋菓子は、好きか」
『……はい?』

突然の言葉に首を傾げた。目の前のゼムナスはいつも通りの表情だ
「好きか」
『え、あ、ハイ。』
「明日の予定は」
『今のとこ特に…ありませんが』
「そうか。」

そしてまた沈黙。
ナマエは何が何だか分からず、ゼムナスを伺うように見つめた。

『あの…?』
「明日、付き合え」
『へ』
「褒美だ。」
(つまり、ケーキを食べに行く、って事?しかもオゴリ)

と、頭の中でぼんやり考えた。それはそれで嬉しい。
ちらりと見上げると意外と近くにゼムナスの顔があるものだから驚いた。

『なっ』
「先程の話は、冗談ではない」
『え?』
「…告白の話だ」
『あぁ、告白の話ですね、告白のはな……、え?』

目を見開いてゼムナスを見ると滅多に笑わない顔が少し頬笑みを浮かべていて。
その笑みは何だか寂しそうでいて思わずゼムナスの服を握ってしまった。

「ん…?」
『あ…いえ、何でも』
「明日、何時頃に出るか」
『お昼…は、どうで』

無駄に肉のついていない手が言葉を途中で遮る。首を傾げると、顎を持ち上げられた。その仕種に思わずどきりとしたのは気の所為ではない。

『ゼムナス…?』
「二人で居る時は敬語はやめろ。」
『でもゼムナスは私達の指導者で私なんかが軽々しく』
「これ以上反論するなら口を塞ぐ」
『え』
「命令だ」

その声の低さに身体が震える。恐怖ではなく、その艶を含んだ声に恥ずかしながらも私は

『…うん』
「……」

欲情してしまったのだ。

「お前が私を必要とするなら…呼ぶといい。」
『…?』
「私はお前以外、見る事はない」

ゆっくりとなぞられた唇が熱を持つ。
ああ、きっと今の私は茹蛸のように真っ赤になっているのだろうなぁと考えながら俯く。

『私…』
「…ん?」
『わ、私だって…貴方以外見れないし…』

口ごもりながら反応が無いゼムナスを見上げると目を見開いて私を見つめていた

「……どういう事だ?」
『…っじ、自分で考えて!』

そう声を荒げてゼムナスの部屋から飛び出した。
数歩進んで壁に寄り掛かり、今だ熱の下がらない顔を壁にぶつけた

END

不器用すぎて空回りしそうな1。思った事ははっきり言うんですが報われない事多し。あと無駄にフェロモン振り撒いてそうです。
お読み頂きありがとうございました!


イトハン