ぐさり、という音が正しいであろう、それは見事に崩れ落ちて。
綺麗なそれは赤い雫を飛び散らせた。
『シグの馬鹿』
覚めた目付きで刺したそれを見つめ、もう一度引き抜いて勢いよく刺す。
びっ、と飛び散るものに顔を顰めた。
『シグが悪いんだから』
「おい…もうやめておけ」
『だってサイクス!シグが!』
「可哀相だろう」
それが、と指さすそれは綺麗に飾られていたはずの無惨に崩れた――ケーキ。
苺はフォークに刺され穴だらけで赤い汁が滲み出ていてケーキは……もはや説明の仕様がないほど。
『だってシグが悪い。』
「だからと言って食べ物に八つ当たりするな。」
『たふぇふほん!』
「食べながら喋るな。汚いだろう」
ケーキを頬張る彼女を溜息を吐きながらサイクスは紅茶を差し出した
ちらりと扉を見ると顔面蒼白のシグバール。
(まぁ、自業自得だな…)
甘いものが大好きな彼女はいくつかのケーキを目の前にしても珍しくかなりご立腹だ。
シグバールの未来が手に取るように見える。
「今回は泣かないんだな」
『涙なんて昔に枯れたわよ!』
「だから、ケーキに八つ当たりするな。口からケーキを飛ばすな」
『アイツ…どうやって懲らしめてやろう』
怒りが収まる様子のない彼女に、サイクスは深い溜息を吐いた。
END
序盤サスペンスぽくしてみた
シグと喧嘩。ママンはいつも被害を被る。
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イトハン