なぜだろう
彼は私を抱く時、ううん、私を…蹂躙する時いつも悲しそうな顔をする。
心なんてないくせに
とうの昔に捨てたくせに

『っは』
「…ナマエ、入れただけでは気持ち良くならんだろう」
『…んっ、ぅ』
「動け」


彼に跨がり、埋め込んだ欲望が容赦なく中を刔る。
震える膝を立たせ、腰を上げた。
暖かいソレが失われるのが怖くて腰を落とす。
口を塞いでいる猿轡を噛み締めてその行動を繰り返した。

『っふ、あ、ん』
「ナマエ…」
『あ、っぅ』

前に、問うた事がある。
私を犯しているくせに、どうしてそんなに悲しそうな顔をするの、と。
それからだ。
彼は私の視界、口を塞いだ。
何も見れないよう、何も問わないように。

「全然駄目だ」
『っう!』

考え込んでいると、ベッドに押し倒され、中に入っている欲望が容赦なく擦る。
おまけに両手も拘束されている所為で受け身など取れず、体制を整えようとする前に激しく突き上げられた

『ふっ、ぅう!!ん、んッ』
「…っ…」
『んん…!!』

もう、何度こうして蹂躙されただろう?
いつからだろう、彼が私を蹂躙するようになったのは。
ええと、確か――駄目だ、快楽に浸る頭では考えきれず私はただただ喘ぐしか出来ない。

『んぁ、ん、ぅふっ』
「…ナマエ、全て、飲み込めよ」
『んん゙っ!!んー!!』

今日もまたお構いなしに出されるのか
そう考えると憂鬱だった。処理するのも面倒だし、何より彼の子なんて、孕みたくなかった。
だって私が望んでいるのは貴方のものじゃないから。
暴れても無意味な事は重々分かっているのに、本能が、僅かに残った意識が嫌だと叫ぶ。

「――ッ」
『っ…う…』

ああ、あつい。
中で脈打つ欲望を感じながら私は覆い隠されて見えない瞳を強く閉じた。

助けて。

そう胸中で呟く。
不意に目隠しを引っ張られて目をゆっくり開ける。

『……』
「あいつはもう戻らない」
『…』
「アクセルは、俺と、お前を…俺達を置いて行ったんだ。」

また彼の悲しそうな顔を目にし、私は視線をずらした。
視線の先には昔、3人で写した写真。
少し照れた笑いを浮かべる彼と、私と、大口開けて笑っているアクセルと。
自然と涙が零れた。

「だから、お前は俺とずっと一緒に居ないといけない。」
『……』
「俺達は離れてはいけない」

猿轡されたままの唇に、彼の唇が触れる。
冷たい唇にまた涙が零れた。
するすると下りてきた唇は左胸に強く吸い付き、紫色した印を残した。

「お前と俺の鎖だ、ナマエ…」
『ふぁい、く、ふ』
「安心しろナマエ。俺はお前を置いては行かない。お前と、お前の側でずっと生きるんだ」

彼の手がお腹に触れる。
あまりの冷たさに身体が震えたが彼はお構いなしに撫でる

「子が出来たら…お前もあいつの事など忘れる。」
『ふ…っ、ぅ…』
「新しい命を授かれば、きっとあいつ…アクセルの傍じゃなく俺の傍がいいと思うようになる」
『うう…』

そう呟いた彼は再び私の目を覆った。

「俺達は繋がっていないといけない」
『んんッ、んん!!』
「だから、早く孕むように沢山満たしてやる」
『ん゙ー!!』

嫌だ、と叫びたくても叫べなくて再び突き上げられて私はシーツを握りしめた。
彼はどうして私に執着するのだろう?簡単な事だ。
私も彼も、大事な人に置いてかれてしまったから。

アクセル、貴方の所為よ

「苦しいのか?」
『ふ、ぅっ、ん』
「…外してやる。だが余計な事は言うな。言葉はいらん。」

貴方の所為で私達の関係は駄目になった
彼も壊れてしまった。

「ナマエ…お前が愛しい…っ」
『サ、イク……ス』
「お前だけは…、俺を置いて行くな…」

貴方と彼、二人共恨みたいのに恨めない。どうしてくれるの?
私はどうしたいんだろう。
彼が悲しそうな顔をする理由を本当は知っている。私が笑わないから。
私が泣くのは優しかった彼も、アクセルももう戻ってこないから。
昔の2人が戻ってこないから。
ぼんやりとそう思いながら私は、きつくシーツを掴む手を離した。

END

すみません。とりあえず。
2の8逃走中のお話。78とヒロインは昔っからの親友、みたいな。
7がおかしな奴ですみません。7スキーみなさんすみません。
追記→Bbsにて、78、親友でしたね。おったまげーる

090804


イトハン