『ザルディン起きてぇ』

朝、可愛らしい声で目覚める。
抱きしめようと手を伸ばしたら叩かれた。
まどろむ目を開けてみるといつものナマエとは違った姿があった。

「ナマエ…?」
『ん?』
「だよな…」
『何言ってんの!どお?似合う?』

くるりと回る姿に今だ覚醒しきれていない目をぱちくりさせる。
短いスカートがひらりと舞い上がり危うく下着が見えるのではと言う程、短い。


『忘れてたの?私今日から学校に通うんだよ!ザルディンは保護者として来てくれるって言ったじゃない』
「…そうだったな」
『制服ってなぁんか初々しいよねえ!しかもこの制服カワイイし!どう?』



どう、と言われても。
少し短いんじゃないか。あとシャツの下に何か着ろ。下着が透けて見えるだろう。
お前と同じ年代の男達は思春期真っ只中なんだから色々と想像されたりちょっかい出されたりしたら困る。
そう思いながらゆっくり起き上がる。ネクタイが曲がっていたので直してやるとはにかみながらありがとう、と言われ朝一番の笑顔がとても眩しい。


「…スカートが短すぎないか」
『普通だよ?』
「プリントパンツなど履かず色っぽい下着をは」
『変態!』


本音が言えなくてついつい意地悪をしてしまう。思い切り踏まれた足が痛い。
その暴力的なところを直さねばならんな。


「支度をする。先に朝飯を食べていろ」
『やだ。待つ』
「?」
『学校行く最初の朝は一緒にご飯食べたい』


照れた笑みを浮かべて上目遣いで言われ、理性が吹き飛びそうになるが押さえる。今、ナマエを剥いだらサイクスの鉄拳が来る。あいつの事だきっと初日から遅刻させる気かと何だと喧しく言うに決まってる。
あの小姑め。


「…分かった」
『コーヒー入れてるね』
「あぁ」


冷たい水で顔を洗う。少し伸びた髭を処理する
スーツでいいかと思いクローゼットを開けるとぴしっと綺麗にアイロンがかけられたワイシャツがあった。


「…俺はかけていないぞ」


一人ぽつりと呟いて着替えながら首を傾げるとナマエが声をかける。


『あ、多分サイクスじゃない?今日のために』
「あいつは俺の妻か」
『あははっ』


からからと笑うナマエは子供っぽくて制服がより一掃幼さを引き立てた。
正直、本当に可愛いぞお前。
そう思いながらネクタイを結ぶと細い腕が伸びて、手がネクタイを掴んだ。


「ん?」
『私が結ぶ』
「別にい」
『いいじゃん!』


ネクタイを思い切り引っ張られ、首が痛んだ。身長差がかなり大きいから屈むのが少しきつかった。
腰が痛む。歳か。


『はい、できた!ふふっ、なーんか新婚さんみたいだね!』


誇らしげにネクタイを直し、にっこりと俺に頬笑みを向けるナマエは悪魔だ。お前は俺の理性を試しているのか。ん?
手を伸ばすが蝶のようにするりと抜けて椅子に座るもんだからこの引っ込みのつかない手はどうすればいい馬鹿者。


『何してんの?ご飯食べよ?』
「……。ああ。」


いただきます、と合図をかけて朝飯を食べる。
ナマエのウキウキ気分がこっちに伝わってくる。
嬉しそうな顔を見ると俺もうれしい。だが半面淋しい。
一緒に居る時間が減るし、何より他の悪い虫がナマエに寄り付かないか心配でたまらん。
ナマエに告白なんぞしてみろ。瀕死になるまで殴り付けてやる。
もしナマエに触れてみろ。


……明日はないと思え


「…い、おいザルディン」
「…シグバール…なんだ居たのか」
「気持ち悪ィよお前。思ってる事だだ漏れ。」
「五月蝿い」


と言うかいつの間に来たんだお前はという視線で睨み付けるとシグバールは苦笑いする。


「何のようだ」
「いんや、そろそろ時間じゃねぇかなと思ってな。」
「時間…」


腕時計を見るとまだ7時過ぎ。だがシグバールが持っている時計は8時半。
目を見開くと同時に腕が捕まれる

『ザルディン回廊!』
「いやばれたらまずいだろう」
『普通に行ったら間に合わないって!』
「間に合わないくらいなら行かない方がい」
『ダメに決まってるでしょ馬鹿!』
「考えても分かるだろ馬鹿」


ナマエに続いてシグバールに馬鹿と言われ少しムッとした。ナマエはいいがお前に言われたくないぞこのロリコンが。


「てめーもロリコンだろーが」
「人の胸の内を読むな」
「だだ漏れなんだよムッツリ」
『はーやーく!』


呼び掛けるナマエの元へ行くべく邪魔なシグバールを突き飛ばす。
ソファに減り込んだみたいだが気にしない。


『行こ、ザルディン』
「あぁ」
『?なに?』
「行ってきますの口付けはな」
『うるぁ!!』
「ぐっ!」


ナマエ蹴り上げが見事にヒットした。
今日の下着はそれで良いと思う、など思いながら回廊を開いた。

(そんないちにちのはじまり。)


END

3好きさんごめんなさい。一応ワタシも3好きなんですよ?
3が変態でごめんなさい…最近彼を変態にするのが好きです。



イトハン