空気が冷たい――


ナマエはそう思い、まだ眠気が残る意識を持ちながらも起き上がり窓に目を向けた。


『…雪…?』


いつものコートを身に纏い、長い廊下を歩く。とにかく、冷える。かなり冷える。
何でこの世界に雪なんか。
ナマエはもんもんと考えながらある一室へ向かっていた。
大きな扉の前に立ち、扉を叩く。すぐに中から短い返事が返って来た。


『失礼します』
「…ナマエか」


目の前の男に軽く会釈し、見つめると、その男は窓の外を見つめていた。


『ゼムナス、雪が降ってます』


そう告げるとゼムナス、と呼ばれた男は今だナマエに視線を向けず、ただ窓の外を眺めていた。

「あぁ、そうだな」
『何か異常が発生したのでは?この世界に季節なんて…』
「何も心配はいらぬ。」
『え?』


やっとナマエの顔を見たかと思えばゼムナスの顔はいつもより穏やかでいて。
そんな彼の姿にナマエは目をしばたく。


「私が作り出した」
『ゼムナスが?』
「あぁ。どんなものか見てみたかったのだ」


ゆっくりと立ち上がりナマエに頬笑みを向ける。それは一瞬だった。そしてまた窓の外に視線を向け、未だ降る雪を見つめた。
ナマエも恐る恐る彼に近付いた。
『何故?』
「お前が見たいと言っていただろう」
『え…』
「わざわざ他の世界に行かずともよいだろう。」

遠くを見つめたままゼムナスはぽつりと呟く。
ナマエの目には何故かいじけているようにも見えるが仮にも指導者だ、皆に畏れ敬われている方。そんな事あるはずがない、と思っていた


『でもわざわざ…私なんかのために』
「お前だからだ」
『…私、だから?』
「…わざわざ、他の世界に行かずともいい」
『それ、さっきも聞きましたけど…』


そう告げるとゼムナスはナマエを見つめた後、真っ暗な世界に降る白に視線を向けて黙った。

『ゼムナス?』
「今日はクリスマスだ」
『え?あ、えぇ…そうみたいですね』
「…何を与えていいか分からんのだ。だから、この雪の世界は、私からのクリスマスプレゼントとする。受け取ってくれるな?」

何の事だ、と思いつつもナマエは真っ直ぐこちらを見るゼムナスの視線を受け入れ、逸らせず頬笑む。


『ありがとう』
「…寒くないか?」
『寒いですか?』
「いや…」
『寒いなら、こうすれば、いいんじゃないかと』


ぎゅう、と、手を握るとゼムナスは目を見開いた。が、暖かな温もりは手だけではなく全身に広がった。


「手だけでは足りん」


背後から抱きしめられ、ナマエははにかんだ。
これでは、まるで――

『ふふ、何だかまるで恋人みたいですね』
「みたい、ではなく…そうだろう?」
『…はい、そうでした、ふふ…』


外気の寒さに身体は冷たいが顔が熱い。
そう思いながら、窓の外を見た。
朝なのに、景色は黒と白。とても綺麗だ。ナマエはそう思った。


「メリークリスマス、ナマエ」
『メリークリスマス…』


(White Nightをあなたに。)

END

指導者のやり方はわかりにくいと思ったり。
指導者なんで色んな事出来るのだよ。
メリークリスマス!


イトハン