『メリークリスマス!』
事の始まりはナマエの奇襲。
妙な格好をしたナマエが俺の上に居た。
「…何の用だ…」
『大好きなザルディンのために可愛いサンタさんが来ちゃったゾ』
「ぬかせ。退け、邪魔だ」
『このまま押し倒して』
「生憎、お前を押し倒したくなる程飢えていない」
『ちぇーつまんなーいの』
渋々、俺の上から退くナマエは俗に言う"サンタ"とやらの格好をしていた。もちろん、本で見た、あの髭や長いズボンはなく変わりにすらりと伸びた脚が徐に見える。
『見惚れちゃった?』
「刺されたいか」
『やーん、怖い』
「お前、シグバールと似てきたぞ」
『あらやだ』
洗面所へ向かい顔を洗う。腰周りが暖かい。歯ブラシをくわえたまま、鏡を見るとナマエの腕が背後から伸びていた
『あったかい』
「邪魔だ」
『いいじゃん、ちょっとくらい』
ぶつくさ言って、ナマエは洗面所から居なくなった。いつも通りに支度を整える。
寝室に戻ると、ベッドが盛り上がっていた。
「おい」
布団を剥ぎ取ると潤んだ瞳でこちらを見つめまるで誘うかのように軽く開けたサンタの服、そしてスカートがギリギリまで上がっていた
『ザルディン…』
「ベッドから出ろ」
『お願い…相手して?』
甘えるような声に思わず生唾を飲む。
ナマエは食い下がる気はないようで、胸元を押さえて見上げてきた。
「…昨日も相手してやっただろう」
『足りない』
「他の奴に頼め」
『やだ、ザルディンじゃないと、いやなの』
縋り付くように伸ばされた手がコートを掴む。
俺は溜息を吐いた。
『ザルディン…』
「…仕方ないな。朝からこんな、不規則な事」
ナマエの唇が、吊り上がった。
『あっ…や、だめ…ザルディン、そこやだ』
「五月蝿い」
『ひどい…待って、ちょっと…』
「待てん」
『やだっ、私、いっちゃう』
「勝手にしろ。ほら」
『やっ…あぁ!!』
がくりとうなだれるナマエを見て、鼻で笑う。
「また俺の勝ちだな、ナマエ」
『ひどいよ、ザルディン…待ってって、言ったのに…』
「俺はあっさり終わらせて気持ち良かったがな」
『ばかぁ…』
「もういいだろう」
『ヤダ、まだ足りない…』
「いい加減終わるぞ」
『あっ』
ぷつん、と消えたディスプレイ。
ナマエは不満そうに俺を見つめた。
「お前、向いてないんじゃないかこれ」
『他の人には勝てるのに、どうしてザルディンには勝てないのかなぁ』
「さぁな」
『どーしても5連以上消す前にザルディンから送られてきたおじゃまぷよが詰まってくんだよね』
ディスクを取り出し、ケースに入れてナマエに手渡す。ナマエは頬を膨らましそれを受け取るとソファに寝転がった。
『ね、今日はねザルディンにお礼持ってきたんだ』
「は?」
『いつもお世話になってるから』
ナマエが持ってきた小さな包み。
一体、何なんだ。尋ねようとする前に先にナマエが包みを開けた
「おい、おい待て、それは俺にくれたものじゃないのか」
『ごめん早く見たくて!』
「……」
包みを開けて、中から出てきたものは真っ赤な光る石。
まるで、血を固めて作ったような赤だった。
「何だ、これは」
『研磨石。』
「研磨材の事か」
『うん。綺麗でしょ?』
「…まぁ、な。何故これを?」
『綺麗だったし、ザルディンに何あげたら喜ぶかなって。食べ物とかはいらんとか言われそうだったし』
「まぁそうだな」
手の平程の大きさのその石を転がすと光の入り具合で色んな赤が見える。
『だから、よく鍛練してるから槍とか刃零れしないかなと思って』
「…」
『本当は、柘榴石じゃなくてザルディンの瞳と同じ紫水晶にしようと思ったけど専門家さんが砕けるって言ってたから』
「それは石の材質が違うからな」
『使ってね』
頬笑むナマエの笑顔に見惚れてしまい、ただ小さく頷いた。
そしてソファから立ち上がるナマエを見上げる。
『じゃ、私部屋戻るね』
「…ナマエ」
『ん?』
「少し待っていろ」
ナマエを待たせて寝室へ向かう。ベッド脇の引き出しから長方形の箱を取り出した。
確か2週間前に、これを見て、買ったんだったか。
その箱を持って戻る。
『どうしたの?』
「お前にやる」
その箱を渡すとナマエは目をぱちぱちとしばたかせていた。
『なに、これ…ラッピング…プレゼント?』
「あぁ」
『え!?もっ貰っていいの!?』
「お前にやると言っただろう」
『ありがとう!わーい!なにかななにかな〜!』
いそいそと箱を開けるナマエに思わず苦笑する。まるで子供のようだ。
『わっ…綺麗……ネックレス…』
「……」
『しかも柘榴石!』
「…その色が一番お前に似合いそうだったからな」
『ありがとう!』
笑顔で礼を言われ、思わず視線を逸らした。こいつのこの笑顔を見る、何故か動悸が激しくなる。一体何なんだ。
そうぼんやり考えてるといつの間にかネックレスをつけているナマエの姿。
とても嬉しそうに頬笑んでいるものだからこういう時どうすればいいか分からない。
だからどうにか話題を捜す。
「ケ、ケーキ食うか」
『食べる!クリスマスケーキ?』
「別に、お前の為に買ってきたわけではない。自分で食べるために」
『ケーキ!ケーキ!』
人の話を聞かないナマエに溜息を吐き冷蔵庫を開け、ケーキが入った箱を取り出してテーブルに置いた。
ナイフを持ち出してナマエの元へ行くとナマエが目を見開いていた
『ザルディン、これ本当に一人で食べるつもりだったの?』
「あぁ」
『…1ホールを、一人で』
「……」
しまった。
そう思った時には遅く、無言でケーキを切った。
『ザルディン、甘いの好きなんだね』
「あまり好みじゃない」
『え。ケーキ…』
また墓穴を掘った。これ以上嘘をついても仕方がないと思い、ケーキを乗せた皿を手渡した。
「…お前と食う為に買ってきた」
『ふーん?』
「何だ」
『ううん、嬉しーなって。ザルディンが私と過ごす事考えてくれてケーキもプレゼントも用意してるんだもん』
ケーキを頬張り、幸せそうな顔をするナマエ。
視線を逸らし、ケーキを食する。
『ザルディン』
「…」
『来年も、一緒にケーキ食べようねー約束!』
「…あぁ」
『メリークリスマス!』
「……メリークリスマス。」
(I'm sorry not an engage ring)
END
ツンな3。研磨材の事はもう本当曖昧です。確か柘榴石使ってたとか、だったかな。
メリークリスマス!
イトハン