白色のキャンバス


夕日が差し込む美術室。

絵の具臭い部屋の中でたった一人、私は真っ白なキャンバスの目の前に立っていた。片手にはパレットが、もう片手には筆を持っていたが、その先に色はない。


もうじき夏休みに入る。勉強に苦労はないため補習で訪れる予定はないが、私はこのキャンバスを完成させるためにうだるような日照りに射されながらここへ来ることになるだろう。

数少ない美術部員。やる気のない同級生たちはキャンバスに手をつけることもせず帰って行った。それに触発される下級生もまた、この課題を完成させることはないだろう。顧問はカンカンだ。
そんな顧問は最後の砦と言わんばかりに私に目をやる。こんなやり取りももう何度目かわからない。私はパレットと筆を机へと置いた。

スランプに陥った私は、今度こそ顧問の期待に応えられないだろうと項垂れた。


「……でも、夏は長いし。どうにかしなくちゃ」


私はキャンバスをそのままに、鞄を腕の中に抱えた。

今日はもう帰ろう。明日の自分が頑張るはずだから。


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