それはとても急な任務だった。
朝目が覚めて前々から入っていた近場の任務を軽くこなして、その後は昼寝をしようと予定をたてていたのに一本の電話のせいで私は部屋には戻れず何故か宮城県に来ていた。
伏黒が特級呪物の回収をしに行ってるからサポートをしろ、と。上からの命令に反駁できずせめてもの対抗心を持ってはーーーいと答えた。、電話を切り仕事用スマホと睨めっこしていると恵が向かった場所などの詳細が書かれたメールが届いた。新幹線で寝れるかな。そう思って何時間後。すっかり空が暗くなっていたが無事に恵と合流出来た。
「夜中の高校なんて、なんかドキドキしない?」
「しません」
「つれなーい」
いつもの塩対応にけらけらと笑いながらも特級呪物の呪力を探す。暗闇をスマホのライトで道を照らしながら歩いていく。近くには無さそうだが、どこからか微かな呪力を感じた。特級呪物だから微かなんて可笑しいけど。不思議に思いながらも恵を呼ぶ。あの箱の中怪しいかも。すると恵は何も疑わず私の言葉を信じて木の箱、百葉箱を勢いよく開けた。ぱこぱこ何度も開け閉めして、上下左右から見ても何も無かった。やがて、私の方を向いた。その視線はやめて。
「うーん。特級呪物じゃないのかな…。あ、いやでも、これは…そうだと思うけどなあ」
百葉箱の中に手を入れて呪力を感じ取る。弱いものが入っていたらそんな気配もう無くなっているはずだ。恵は自身のスマホを弄り電話をかけた。けらけら楽しそうに話す五条先生の声が聞こえてくる。…ぶん殴りますよ。その言葉は私に言われたのかと思ったよ。
「回収するまで帰ってくるなと言われました」
「そっかー。まあ、特級呪物だもんね。仕方ないかあ」
「…五条先生は美沙さんがここに来ていること知ってるんですか?」
「五条先生?さあ。突然だったから、知らないんじゃない?」
恵の表情が固まったような気がした。五条先生は私の保護者ではないんだけどな。それにもう私だって二十歳を過ぎている大人なわけだし。
「それより、特級呪物。残念だけど、気配はここから微かに感じるだけであとは何も感じないから、もしかしたら、誰かが盗んだと考えた方がいいのかも」
「盗む…ここの生徒ですか」
「教師かもしれないね。まあ明日潜入してみて呪力を感じ取ればわかるよ」
「わかりました………潜入?」
「お願いね。恵」
あ、すごく嫌な顔された。
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「で、美沙さんは今日どうするんですか」
翌日。高専の制服を脱ぎカッターシャツにズボンとまるで普通の高校生の姿になった恵をパシャリと一枚撮影したらまた嫌な顔をされた。珍しいからいいじゃん。一枚ぐらい。
「私は市内を見て来る。誰かが持ち出して外に出てたら危ないし」
何事も無かったようにスマホをポケットにしまった。恵とは違い、私はいつものように黒服に身を包んでいる。昨晩なんで俺だけ潜入するんですか!と言われてしまった。いや、待てよ少年考えて。私はもう二十歳を過ぎているいい女だ。流石に女子高生の制服など着れないだろう。想像してみ?あの短いスカート。なに、それでも恵は私と高校生ライフを過ごしたいの?にやにやと笑っていたら少し顔を赤くした恵に勝手にしろと怒鳴られた。なので、勝手にしようと思う。
「…俺より美沙さんの方が呪力の察知早いじゃないっすか」
「そうねー」
「………」
自分が言ったのに、どこか不満げな様子を表したのは見なかったことにしようと思う。
「特級呪物って両面宿儺の指なんでしょ?それぐらいなら恵でもわかるよ。呪力を感じ取る練習だと思ってやってみ」
「…わかりました」
あと何か言っとくことあったかなー、と考えていると恵が結構真剣な顔で私の名前を呼んだ。
「何かあったら電話、忘れないで下さい。すぐに駆けつけるんで」
「それは頼もしいね」
「あと一人で突っ走らない」
「うん。わかってる」
「変な人にはふらふらついていかない」
「恵にとって私は幼稚園児なのかな?」
何歳もの年上の女性にそんなこと言うのは恵ぐらいだよと笑えば彼の表情も少し緩んだ。うん、しかめっ面よりその顔の方がいい。どこにでもいる普通の高校生にみえた。