不良とお嬢様


「あの制服――」
 怜悧夜桜中学、お嬢さま・お坊ちゃんが通う名門中。超お金持ちのお嬢さまと不良と云うなんとも可笑しな組み合わせのふたり。お嬢さまの、その相手が知り合いの瀬名千歳ときたもんだから興味を引かないわけがない。
「瀬名さま、先日は助けてくださったと言うのに私わたくしお礼も言えずに立ち去ってしまって申し訳ありませんでした」
「別に助けたつまりねーし」
「その日からわたくしドキドキが治らないです。何かの病気かと思ってその事を御友人に相談してみたら恋だと仰ったの」
「はあ?」
わたくし、お付き合いしてくださる」
 街の中―――。それも、道のど真ん中で人通りも多い時間帯に堂々と愛の告白をする女に何かのドッキリかと疑いたくなる。目を疑う。
 如何にも不良と、品のあるお嬢さま。嫌でも視線は集まる。「不良に絡まれているのかしら」「あの子大丈夫かしら」と聴こえてくる。絡まられているのは俺の方だと叫びたい気持ちを抑えた。
「あのな、」
「はい。何です」
 頬をほんのり紅く染め、潤とした瞳に言葉が詰まりそうになる。顔もスタイルも申し訳ないくらいに上品。
 彼女は欲しい。だからって誰でもいいわけではない。中途半端な気持ちは彼女に対しても失礼だ。
「昨日、今日逢った女にはいそうですか、付き合いましょうってならねぇだろう」
 彼女の顔が曇る。言いすぎたか、と思ったが、彼女の方が一枚上だった。
「でしたら毎日にお逢いしたらお付き合いしてくださるってことですか」
「はあ!?」
わたくし、毎日、瀬名さまにお逢いします」
 眩しいくらいの笑顔に心が折れそうになった千歳だった。千歳には、何処から突っ込んでいいのか、前向きすぎる彼女の発想に肩ががっくと落ちた。
 こうして瀬名千歳の中学2年生の春が始まった。
 彼女が嵐の如く現れ、去ったあと―――。
「面白そうな事になっているね」
「蓮さん?!」
「何処から見ていたっすか」
「アツアツの告白あたりから?」
「ほぼ最初からすっね」