召喚聖女(?)様、ブチ切れる


01.召喚聖女(?)様、ブチ切れる


「見て! 合格した」
「頑張ったもんな」
「おめでとう」
 大好きなお父さんとお母さんと兄ちゃんと一緒の道を選んで看護師の専門学校へ通った。
 そして、晴れて卒業して国家試験も合格して来月から看護師として働く事ができる。
 職場をお父さんたちと違う場所で、都内で一人暮らし。
「いってきます」
「寂しくても泣くなよ」
「泣かないわよ」
 事件は起きた―――‥‥。
 眩ゆい光と共に視界が真っ白に包まれて次に目にした風景は今じゃ見られない恰好した人々。
「成功したぞ」
「聖女様を呼び寄せる事に成功致しました、皇太子殿下」
 ――‥‥は?
 言葉は解るが、どこからどう見ても日本人ではない。
 それどころか、ここが何処かもわからない。
「聖女様、我々を――」
「知らんわ。何? 誘拐! 犯罪集団!」
 たぶん、漫画やアニメで言う聖職者らしき人物が何かを言いかけたけど、私は叫んだ。
 だってそうでしょう?
 自分のやりたかった夢の為に今まで頑張ってきた事が、勝手な都合で呼び寄せられたら切れない? 仙人であるまいし。
 私が可笑しいだけ?
「聖女様」
「ちょっと並んで正座しろよや」
 説教してやる! と、意気込んだら。
 まさかの、まさか。
 え、なに。何。
 怖いだけど。
 横一列に並んで正座をし出す。
 ちょっと待って。
 本当に待って。
 言い出した私が言うのもアレだけど。
 アニメや漫画でよく見かける王侯貴族ぽい人もいるだけど?
 さっき、皇太子って聞こえたのは気のせいだよね!?
「ちょっと責任者、立ってこっちに来なさい」
 責任者に責任を取られせる為に一発くらい殴ってもバチは当たらないよね?
 ‥‥‥、なんで貴方がこっちに来るのよ。
 一番来て欲しくない人物だっただけど?
 この中で一番、身分の高そうな人物がこっちに来た。
 もういい。
 こうなったらなる様にしかならい。
 流石に殴る勇気はないから。
「いい? 貴方がやったのは立派な犯罪! 考えみなよ。自分の大切な人が行方不明になった時のことを」
 ええ、家族と仲が良かった。
 友達もたくさんいた。
 恋人だってできたかも知れない。
「考えた事ある? 我が子がいきなりある日、行方不明になった親の気持ち、家族の気持ち!」
 大好きなお父さんやお母さん、兄ちゃん。
「帰れるだよね?」
「‥‥無理だ」
「(怒)」
 あまりにもむかついて、我を忘れた。
 気づいたときは既に遅し。
 たぶん、ここ一番身分が高いひとを殴っていた。
 めでたし、めでたし。






02.召喚聖女(?)様、ひとりになりたい


 一人なりたい私の希望で、聖女の為に当てがれた部屋へ案内された。
 私が入居するはずだった部屋の数倍広い部屋。
「なんか、疲れた。氷の入った冷たい水が飲みたい気分」
 ‥‥‥。
「きゃぁぁああ!!?」
 頭から冷たい水と頭に何かの衝撃。
 私の周りには散らばった透明な塊と水溜まり。
 確かに冷たい水と氷って言いましが!?
 頭から被りたいなんて一言も言っていないだけど?!
「聖女様、何かおありで?!」
「何でもない」
「開けてもよろしいでしょうか?」
「大丈夫なのでひとりにして」
 迂闊に何か喋ったらとんでもない事になりそう。
「たとえば、熱いお湯とか‥‥――きゃぁぁああ! 熱っ! あつ! もう、何なの!! 雪が降りそうって言って雪が降ったり――‥‥」
 窓の外を見るとちらちらと白いもの。
 窓を開け手を伸ばすと冷たいそれは手のひらで溶け消えた。
 暑いのに雪が降るなんて可笑しいでしょ!
「服、乾いて」
 濡れたままは気持ち悪く、服が乾く様に言うと乾いた。
 あ! もしかして食べ物も出たりするじゃない?
 普段滅多に食べられない高級店にある口の中で蕩ける様なステーキが食べたいわね。
「お皿に乗せて、口の中で蕩ける様なステーキが食べたい」
 あ、やっぱり出てきた。
「フォークとナイフも必要ね」
 おー! フォークもナイフも出てきた。
 味はどうかな。
「んん、美味しい。本当に蕩ける様なステーキ」
 今まで気分が最悪だけど、ちょっとテンションが上がってきた。
 次々に食べたいものを言葉にしていく。
 寿司やラーメンやデザートなど。そして、気づいた。
 お腹は満たされないことに。
「意味ないじゃん」
 いろいろあって疲れていたのか、いつの間に眠りについていて次に目を覚ましたときは外は明るくなっていた。
「聖女様、おはようございます。朝食はどちらでお食べになりますか?」
「こっちらで」
「承知しました」
 暖かいタオルで顔を拭いている間にワゴンに乗せられて運ばれてきた白いパンとスープとサラダなどをテーブルに並べていくメイド。
「ごゆっくり召し上がってください」
「ありがとう」






01.召喚聖女(?)様、祈る


 三食におやつ付きの待遇良さすぎる引きこもり生活も一週間。
 流石に心が痛くなってくる。
 本当に何もしていない。
 召喚された初頭に、この世界のことを説明された記憶は新しい。一週間前だしね。
 この世界には、魔障が存在し、魔障を浴びすぎると動物たちが凶暴化すること。
 魔王を倒さないと悪化する一方。
 なに、怖いだけど。
 凶暴化した動物たちを騎士たちが立ち向かっているけど、怪我を負うこともあって苦しんでいることも。
 癒せるのは異世界から来た聖女のみ。
 まだ納得はできないけど。
「仕方ないわね。やったやろじゃないの」
 第一騎士団の隊長、キースに案内されて屯所に向かった。
 思って以上に負傷者の多さに驚く。
 一番重症者ぽい騎士のところで立ち止まり、何をすればいいか聞いてみる。
「どうすればいいのですか?」
「祈ればいいのです」
「そう、わかりました」
 用はアレでしょう?
 子ども頃に転んだときにお母さんにやってもらった御呪いみたいなアレ。
 手をかざして唱えてみる。
「痛い痛いの飛んでいけ〜」
 すると、目の前の男性の傷は消えた。
 本当に消えた。やば、凄くない?
 そう思ったのつかぬのま。
「‥‥俺の傷は消えたですが、――‥‥あの、すみません」
 まさか。
 そのまさかだった。
「なんで!? 何で、こうなるの!」
 私をここに連れ来たキースが、治した男性と一緒のところに怪我を負っている。
 確かに飛んでいけって言ったけれども! 誰かに移れとは言っていない。
「痛みが消え、傷が癒える」
 今度こそ、そう祈ると誰にも移ることなく傷を癒すことに成功した。
 凄く不便。