「にゃん?!」
え、おすわり?
急に言われたもんだから一瞬、なんのことだから分からずに首をかしげる。
「やっぱり、おすわり出来ないか」
なに、この金髪の少年。
よくわからないけど、ちょんと座って首をかしげる。
「おて」
「にゃん」
右手を置く。
「おかわり」
左手をおく。
「ふせ」
身体を地面にくっつける。そして、シャルナークを見つめる。
「一周回って、わん」
くるりと回って、わんね。
わん…? 猫の私にわんと言えと。
「っ…にゃん!」
「ははは、わんは流石に無理か」
そうだよ! 無理に決まっているでしょ。
私、猫だよ。犬じゃないの。いや、ほんとは人間だけど。なぜか、猫になっていただけで。
「よくできた君に、ボールだよ」
「にゃん」
ボールを転がすシャルナーク。
何故だろう。無性に追いかけたくなる。
身体を地面に伏せて、お尻をあげる。そして、ボールめがけて走る。
手で転がしたりして遊んでいるとハッとする。
「にゃぁ!」
何やっているだ。わたし。
つい無意識で遊んでしまったけど、私、これでも成人した立派な大人だった。
日に日に猫化していく自分に落ち込んでしまった。
「何いじめてんのアンタ」
「俺…? 俺、いじめてなんかいないよ。」
「落ち込んでるじゃん」
今度は、マチが猫じゃらしをゆらゆらさせてくれる。それを追いかけてしまう。
左右に揺れる猫じゃらしを追いかけるように頭が左右に動く。
えい、と手が勝手に動く。
「にゃん」
何、これ。すごく楽しい。
えいと、手が勝手に猫じゃらしを追いかける。
「にゃ!」
違う。違う。
しゅんとなる。
あっちでおとなしくしていよう。
いつものところで大人しく寝ることにした。しばらくすると、フェイタンの足音が聞こえてきて顔を上げて耳をぴくぴくと動かす。
帰ってくる。フェイタンが帰ってくる。
身体を伸ばすかのように前足を伸ばしてお尻をあげる。
ここから入ってくるだろう入口で座りながら待ていると近づいてくる足音になんだか知らないけど嬉しくなる。
……あ、来る! 帰ってくる。
「にゃん」
「お前か、」
「にゃん」
「健気じゃないか。帰ってくるの出迎えるなんて」
あいさつをして、いつも席に行って身体を伏せる。一つ、あくびをして眠りにつく。
芸をする。