始めの頃は鬱陶しそうに扱っていたフェイタンだが、猫は気にする素振りも見せずにフェイタンの肩に乗る。先に降りたのはフェイタンで、今では見慣れた光景になりつつある。
特に邪魔することもなく、ただフェイタンが読んでいる本を覗くように見ている。
「あの猫、フェイタンの何処が好きなんだろね」
「さぁ?」
別に餌付している様子も無い。可愛がっている様子も無い。
そうそう、餌といえば散歩の時にいろんな人から貰っている。それも、餌をくれる人から可愛がられる様子にも見える。だけど、必ずフェイタンのところに帰ってくる。
「にゃん」
フェイタンの肩から降りて、出かけてくると言うように一声かける猫。フェイタンは目線だけを向けて、また、本に目線を合わせる。
近くの開いている窓に飛び移り、ジャンプをして外に出ていた。
いつも、3時間位すると帰ってくるはずの猫が5時間過ぎても帰ってこない。
俺の気のせいか知らないけど、フェイタンが苛々している。
「遅いね」
「このまま帰てこなくていいね」
「にゃーん」
いつもよりもか弱い鳴き声。
姿を現した猫は、真っ白の毛が赤黒染まっている。前足をてくてくと庇うようにゆっくり歩いている。
空気が一瞬、ピリっと張りつめたのを感じた。
猫は、いつも寝てる場所に行き身体を横にすると怪我をしている前足を小さな舌を使って舐めている。
アジトから出ていかと思えば、しばらくしてフェイタンが戻って来た。そこには、包帯と消毒液。
「大人しくしないと殺す」
「にゃぁ!」
手慣れた手つきで猫に傷の手当てをして、包帯を巻いているフェイタンはレアでしか無い。
「にゃん!」
鬱陶しそうに扱っていても、気にはかけているらしい。
手当てをしてもらう。