それに何故か今回は半分だけが猫化してまった何とも奇妙。この姿を人間に見つかったら見世物にされるか、化け物だと思われて殺さられるな。うん。私は人間の残酷さを知っている。
とぼとぼと歩いていたら帯刀を腰に刺した男が目の前に現れた。小さな悲鳴をあげた男は刀を構えた。
「鬼…っめ!」
「……は?」
何言っているだろう。
まず初対面でいきなり刀を向けるかな。ちょっと頭がおかしいのかも。関わらないでおこうと、目線を逸らさないで後ずらりをしていく。
すると、男が有無を言わせないで斬り掛かった。
怖い、怖い、怖いだけどおお? 私が君に何をしたの?
予想は外れて欲しかった。的中はしないで。お願いだから。
とりあえず背を向け逃げることに集中した。それが災いか、幸いか、中性的な好少年じゃなかった――!
「せっかくお楽しみだったのに。君も―――……」
私は、そこで意思を失った。
次、目を覚ましたときは見慣れない天井。
「おはよう。よく寝れたかな?」
「ひぃぃー!」
「いいねぇ。その歪んだ表情。…ふふ、癖になりそう。喰べないでおいて正解だったよ」
やっぱり――っ!
何か食べていたよね。見てはいけないものを見てしまったよね。
恍惚とした表情で私を見るその男は、変態だ! 瞬時に思った。
心の底からうきうきしている。だって、瞳がきらきらしている。ひとの不幸は蜜の味的な?
思ってはいてもここまで顔に出すひとは初めて逢ったと思う。
「あれ…? もっと不幸に満ちた表情を見せてくれないと面白くないなあ」
「ですよね! おっしゃると思っていた! だけど、不思議くらいに冷静になってきたの。変態のおかげで」
「魘夢ね、俺の名前。お嬢ちゃんは?」
「知念 未來」
「未來ちゃんね」
魘夢と名乗った、その男は、掴みどころがない不思議な感じ。
「未來ちゃんは鬼でもなそうだけど、人間でもないよね。ねこの獣かな?」
「………は! そうだった!」
確かめるかのように頭に手を伸ばすとぴくぴく動く獣耳と、長い尻尾が見えた。
今の今まで忘れていたけど、中途半端に猫化していたことを思い出す。
私の気持ちを表してから、耳が垂れる。
「未來ちゃんは、自分が獣なのことに気づかないなんて馬鹿なのかな?」
「う、……うるさい! 何でこんな中途半端に……。ひぃ、やぁあ!?」
「へー、尻尾って感じ易いだね」
「ひゃぁ!? 触らあぁ! ひぃ! だから――…ひゃ?!」
猫は尻尾が敏感なの。
無防備に触れたりすると猫パンチを喰らうよ。
うるうると目尻が熱くなってきた。
最悪だ。私の反応を見て、楽しい玩具を見つけたかのような表情で見ている。
睨みつけて魘夢を見るが、当の本人は愉快そうにしている。
「いいねぇ。今の表情。……ふふ」
見ていない隙に逃げてやる! と、心で決めたとき――。
「逃げようなんて馬鹿な考えは良しなよ? 逃げたりなんかしたら、ふふ…」
バレた!
そして、すごく恐ろしい表情で笑っている。命よりも精神的なダメージを喰らいそうな予感がするのは気のせいかな?
ああ、とんでもない悪魔に拾われたようです。
悪魔に拾われる