中編


 
がたごと。ガタゴト。
石炭のにおい。
俺は帽子と肩にかける外套を追加し、日の暮れた駅舎にいた。もちろん、双子も一緒だ。
もう何度目かの乗車。下車したりもしてるから、ふたりは慣れたように乗り込む。

「それじゃあ、後でね」
「はい」
「お待ちしておりますわ」
「うん、いい子にしてるんだよ」

いってらっしゃいませ、と声を揃えて言われる。心地良い。
ただ面白いと思っていただけなのに、ふと顔を出すこれはまるで、人間みたいな感情で。どこかくすぐったい。
ふたりが先頭車両で一緒に座ったのを見届けてから、外に出る。走り出す列車。帽子はさっさと運転手に渡す。

「ごくろうさま」
「はいっ!」

運転手、車掌、それから──他にも何人か、人間を従えている。
あの子たちもそれを知っていて、俺が何をしているのかを分かっている。承知している。
先頭車両の双子だけは寄るなと厳命してあるから、大丈夫。破ったら夢を見せてあげないもの、俺。うふふ。
特に車掌は必死だからねぇ、絶対にあの子たちには手を出さないさ。

「少し前の駅舎で、報告が」
「うん?」
「帯刀した者が数名あったと」
「うーん、そっかぁ。鬼狩りだろうねぇ」
「…」
「…大丈夫、どうせみんな寝ちゃうんだから。そうでしょ?」
「……はい」
「いざと言う時にどうするかは教え込んだはずだ。さ、今夜もよろしくね」
「……はっ」

そう。
大丈夫、いつもと同じ。
これまでと変わらず、鬼狩りたちもみーんな眠らせる。協力者たる人間と、あの子たちを除いて皆みんな眠らせて、廃人にして、それからぺろり。ふふ、また強くなるんだぁ。

「…ふふふ」

俺は今日も列車になる。
名前は拗ねちゃうかもしれないけど。大丈夫だよ、後でちゃあんとこの身体に戻ってあげるからさ。
あぁそうだ、身体を預かっていて貰おうかな。喜んでくれそうだ。



あのふたりは、眠らせても意味が無い。
一度だけ、出来心でやってみたことはあるけれど、まず夢からして真っ暗だった。何も無いところに、ぽつんとふたりで座っているだけ。驚いたよ、夢の中でも一緒にいるなんて思ってなかったからね。
しばらく見ていたけど動かないから無意識領域の方に移動したんだけど、そっちも酷かったね。真っ白なだけの空間に、ころんって精神の核が転がってた。どうでもいいものみたいになってて、そんな空間は初めてだったよ。
つまんなくてすぐ出たけど、出てから気がついてしまった。

あのふたり、精神の核がひとつしかない。

人間ひとりにひとつ。それが当然だ。
でもあの子たちは違う。ふたりでひとつをまさに体現し、核がひとつきりしかなかった。
同じ夢を見て、同じ場所にいるあの子たちは、紛れもなくどちらもが本物の本体だった。
こんなこと、早々起こりうることじゃない。
ゾクゾクしたよ、俺はなんて子たちに愛されたんだろうって。

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しこうしゅぎ。