ひみつとすきと
「あれ、めずらしい」無意識に漏れた声に慌てて口を塞ぐ。恐る恐る様子を窺うと、HiMERUくんは変わらず、ソファに座ったまま寝息を立てていた。
なるべく音を立てないように床に落ちてしまっている本を拾いあげる。コーヒーのおかわりを取りに行っているあいだのほんの数分、それも読書中に寝落ちしてしまうなんて、よほど疲れていたのだろう。そういえば、昨晩は遅い時間に帰って来たのだと言っていた。無理しないでほしいと思う反面、忙しい中でも会える時間を作ろうとしてくれていることが嬉しくて。なんだかとても複雑な気分。
ソファの前に座って顔を覗き込んでみる。いつ見ても綺麗な顔が普段よりも幼く、年相応に見えて、大人びた彼が年下だということを思い出した。
(……私、HiMERUくんの寝顔見るのって初めてかも)
付き合い始めてから数ヶ月と少し。何度かお泊まりだってしたこともあるけれど、HiMERUくんはいつだって私より遅く寝て、私より早くに起きるのだ。
しっかりしてるんだなあと思っていたけれど、アイドルをしているときと同じ完璧な姿のまま、少しの隙も見せてもらえないのが恋人としては寂しいと思うことがあるのも事実で。
だから、つい笑みが零れてしまう。寝顔を見せるということは信頼してる証だとか、気を許してる証拠だと、以前なにかで読んだことがあった。
……信頼、してくれているのかな。そうだとしたら、とても嬉しいけれど。
HiMERUくんの細くて大人な指先にそっと触れてみる。微かに動いた指先がそっと握り返してきて、また頬が緩んだ。