年下の恋人
久しぶりにふたり揃ってオフの休日。特になにか予定があるわけでもなく、おそろいのマグカップにコーヒーを入れて、ソファに並んで各々の時間を過ごす昼下がり。不意に雑誌を眺めていた手元に影が落ちた。何の前触れもなかった。ドラマや映画みたいなきっかけや雰囲気もない、いつもの日常のワンシーン。すぐ近くにきれいな顔があった。そのまま目を閉じる間もなく唇が重なって、音を立てて離れていく。
「どうしたの?」
もうそれなりに長いあいだ一緒にいるけれど、彼の考えていることは、まだときどきわからない。答えを探すように、瞳の中に映る自分を見つめる。しばらくして、蜂蜜色は満足したようにわずかに細められた。
「……いえ。コーヒー、入れてきますね」
マグカップをふたつ持ってキッチンへ向かう背中。揺れる勿忘草色。
ふと、毎日聴いている大好きなメロディが耳に届いた。珍しい。鼻歌なんて、余程機嫌の良いときにしか聞かないのに。
(……もしかして、構ってほしかったのかな)
そうだとしたら、遠慮なく言ってくれれば良かったのに。見た目は私よりも大人びていて、絶対口には出さないけれど、やはり年下なことを気にしているのだろうか。
「ふふ、かわいい」
そんなところも含めて、どうしようもないくらい大好きなのに。
HiMERUくんが戻ってきたら、今度はこちらから仕掛けてみよう。推理上手の彼に悟られないように、そっと雑誌で顔を隠した。