Happy Valentine
いつ、どんなときになにをあげたって笑顔で受け取ってくれるきみだから、どうしようか本当に悩んだの。年が明けて一月が終わり、二月になれば街はすっかりバレンタインムード。どこのお店にも赤やピンクのポップに囲まれたチョコレートのコーナーがあって、甘い雰囲気と香りで溶けてしまいそう。仲の良い友達は「今年こそ百貨店のチョコレート争奪戦に勝つんだ」って意気込んでいた。私は毎年手作り派だから争奪戦はあまり関係ないのだけど、それでもひとつだけ困っていることがあった。
今年のバレンタインは、少し前にお付き合いを始めた年下彼氏の金ちゃんと初めて過ごすバレンタインなのだ。
初めて、といっても元は部活の先輩と後輩だし、これまでもチョコを渡したことはもちろんあるんだけど。だけど、今回は恋人になって初めてのバレンタインなのだから。今年はいつも以上に金ちゃんが喜んでくれるものを作りたい。喜んでほしい。そう思って尋ねてみたのだけど、
「チョコレート? 好きやで! ワイ、好き嫌い嫌いないもん!」
返ってきのはそんな返事。金ちゃんに嫌いなものが無いことくらいとっくの昔に知ってるのだけど、なんとも彼らしい言葉に笑ってしまった。
好き嫌いがないというのはもちろん良いことで、私は金ちゃんのそういうところも大好きなのだけど、やっぱりこの場合は少し困ってしまう。どんなものを渡せば喜んで貰えるんだろう。金ちゃんが特別好きなものというと、たこ焼きとテニスくらいしか……
「……そうだ!」
好きなものを詰め込めば喜んでもらえるかも。最近は惑星を模したチョコレートだって売ってるし、たこ焼きもテニスボールも丸いから、きっと不可能ではないはず。
「金ちゃん、喜んでくれるといいな」
「たこ焼きとテニスボールや!」
迎えた当日。渡した箱をその場で開けた金ちゃんは、中身を見てきらきらと目を輝かせた。
「これ、食べられるん?」
「うん。見た目はたこ焼きとテニスボールだけど、中は普通のチョコレートだよ」
「ナマエちゃんすごいなあ」
「ふふ、ありがとう」
たこ焼き風チョコレートを食べる金ちゃんを眺める。
実は思っていた以上に上手くできなくて、徹夜でなんとか完成させたのだけど……金ちゃんの笑顔を見たら疲れが吹っ飛んだし、結果オーライということで!