星を掴むようなお話です


「花菜はさ、荒北くんのこと好きじゃないの?」
「何で?」

花菜は友紀からの質問に心底不思議だという顔をする。

「いや、普通に考えて……朝まで一緒にいるのは友達ではないでしょ」
「友達だよ」
「…普通はね、友達でも男の子と2人で朝まで一緒にいないよ」
「信用してるもの」
「信用してても!」

友紀は花菜がよく分からなかった。どう考えても自分の考え方が一般的だと思う。
友紀と一晩過ごすのとは違う。

「巻島くんのこと、好きなんだよね?」
「好きだよ」

花菜は当たり前だと言いたげだ。
友紀と花菜は中学生の頃から仲良しだ。その当時は仲良しと言っても5番目くらいで、遊びはしない友達というカテゴリーだった。その関係も高校になると、親友と呼べるものになったと友紀は感じている。歴代の彼氏だって知っている。
友紀の記憶における花菜は、男友達がいるタイプではないのだ。ましてや泊めたりなんてもってのほか、そういうのは彼氏になってから。
花菜にとっての荒北くんはどういう存在なのか、よく分からない。

「……金城くんにね、巻島くんのこと聞いてみたの」
「え!?そうなの?」
「うん、イギリスにね、行ってるんだって」
「……旅行とかじゃなくて?」
「留学、してるらしい」

花菜はどういう顔をしていいか分からなかった。友紀もそれを分かっているからか、何も言わない。

「……そっ、かぁ」

外を見ると、暗くなっている。友紀はもう少しで終電だろう。帰ろうと言わなければいけない。
けれど花菜は外を見てるだけで、何も言わなかった。


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朝の4時まで開いている居酒屋で、花菜は1人で飲んでいた。時計も置いてないからか、今何時かもわからない。
そろそろ帰らなければと思って、駅に向かって歩く。途中で携帯で時間を確認すると、もう午前2時。終電なんてとうの昔になくなっている。

「…はぁ」

ラインを開いて荒北靖友の名を探す。いや、探さなくてもトークの上から2番目にある。
電話をかける。出ないかもしれない。出ない可能性の方が高い。3コール目で、荒北靖友のダミ声でもしもしと聞こえる。

『何時だと思ってんだヨ』
「靖友?今どこにいるの?」
『家だけど…花菜、お前泣いてねーか?』
「靖友……迎えに来て」

荒北靖友は少し間を開けて、花菜の居場所を聞きすぐ行くと返事をした。


(2018.04.23)