「スタンダード次元に行く!」
融合次元の奴らに破壊されたハートランド。たくさんの人たちが笑顔でデュエルしていた広場も、今や跡形もない。
荒んだ街並みはもう、ただのごみ溜め。連れ去られた仲間は数知れない。
ルリも、その一人。
だから私は次元を越えて、ルリを探しにいく。しかし、ユートは静かに首を振るだけで、何も言ってくれない。
嫌だ。
私を「姉」だと言ってくれたあの子を、見捨てたくなんかない。
「ユート、名前、何をしてる」
ユートと私のにらみ合いに、一つ、声が介入した。
そちらに首を巡らせると、案の定、隼がそこに立っていた。
その目付きは鋭く、今すぐにでも人を刺し殺せそうである。
「私、ルリを探しにいく」
「ルリを……?お前がか?」
隼の質問に頷いて答えると、血相を変えた彼に腕を掴まれた。
尋常ではない握力に、一瞬視界が飛んだ。
「行かせない……ッ」
地を這うような低音に、胸がどくりと高鳴る。
その澄んだ黄色の瞳が、やけに血走って映った。
助けを求めるためにユートの姿を探すが、既に見当たらなくなっていた。なんで私と隼を二人きりにしたの。そんな空気、読まないでよ。むしろ私のために近くにいてよ。
「いた、いよ、しゅん……?」
「お前は失ったりしない。奪わせない。だから……行かせるわけにはいかないッ……」
彼のすがるような言葉にハッとした。
隼は怒っているんじゃない。
不甲斐ない自分を責めてるわけでもない。
彼なりの、心配だったのだ。
そうと分かった瞬間、思わずため息が漏れた。小さく、細く。隼に気付かれないように。
「隼、私は消えたりしない。傍にいるから」
「…………」
強く腕を掴んでいた隼の手から力が抜ける。
私はすかさず彼を抱き締めた。
隼も、強いだけじゃない。
確固たる強さの中に見え隠れする弱さに、私は惚れてしまったのだろう。
「名前……」
「うん…」
「悪い…」
「ううん、大丈夫…」
「そうか……」
隼もたどたどしく、私の背中に手を回す。大きくてゴツゴツした手が、私の背中を不器用に撫でた。
「お前だけは、守りきってみせる」
「愛してるぐらい言えないの?」
「……………………………愛している」
呼吸、止まった。
今彼がどんな顔か見たくて、離れようとしてみるがびくともしない。
レアなんだ。
隼ってば、恋人のはずなのに恋人らしいこと一切しないから。
だからすごくレアなんだ、今の。
「しゅ、隼!今の……!」
「ただの気持ちだ。忘れろ」
「む、無理…!!」
思わずニヤニヤしてしまいそうになる口を必死に閉じる。
隼も満更じゃないように私の頭を軽く二回撫でた。
またニヤニヤしてしまいそうになったから、思わず顔を手で覆ってしまう。
私はずっと待ってるから、大切な「妹」取り返して帰ってきてね。早く、この話をしたくて仕方ないんだから。