遊城家の日常

花村 遊菜の朝は早い。
脳内でそんなナレーションを流しつつ私はキッチンに立つ。鼻歌を歌いながら昨日の残り物を温めて弁当箱に詰めていく。その傍らで朝食を作り、余った分を弁当箱の隙間に埋めた。

「ん、こんなもんかな」

味噌汁を一口味見し、コンロを止める。エプロンを外しきっとまだ爆睡しているだろう彼の部屋にノックなしで入った。案の定散々な寝相で大いびきをかいている。せっかく枕もとに置いてある目覚まし時計もセットすらしていない。私のことを信頼してくれているのは嬉しいが、もう高校生なんだから“幼馴染離れ”してもらわないと困る。

「ほーーら!起きて十代!!朝ごはんできたよ!!」

ばしばしと彼、遊城十代の肩を叩くと、「ううん」と唸りはするものの起きはしない。思わずため息をこぼしながら体を揺する。

「じゅーだーい。起きてー。朝ですよー。遅刻しますよー!」
「むにゃむにゃ…どろぉ…」
「……夢デュエル…」

寝ていても起きていても相変わらずのデュエル脳に思わずため息を溢す。だからといって起こさないわけにもいかない。またこれしかないのか、と思いつつ私は十代の上に飛び乗る。

「ぐえっ」
「ほら!!起きてってば!!」

その体勢で身体を揺らせば、やっと十代は目を覚ました。ここまでしないと起きないなんて…本当に手のかかる幼馴染だ。

「おはよ、十代」
「んん……あぁ、おはよ、遊菜」

身体を起こそうとする彼から飛び降りて部屋を出る。「ご飯できてるからねー」と言えば、「はーい」と返事だけ。手を洗い、味噌汁をよそって席に着く。手持ち無沙汰でつけたテレビには見知った顔が映っており、「お!」と声が出てしまった。

「十代十代!!海馬さん!!」
「え!?海馬さん…!?」

恐らく着替えていただろう十代を半ば無理やりに呼び寄せる。彼はシャツのボタンをそっちのけで駆けつけてくれた。
海馬瀬人さんは私と十代の保護者のような人だ。二人並んでテレビの中の彼を見つめる。今の私、多分相当キラキラした目をしているんだろうな。

朝のバラエティ番組の中で紹介されている彼の肩書は「若手敏腕社長」。海馬コーポレーションの社内や、新商品などをインタビュアーが丁寧に紹介している。社内案内中に一瞬でも遊戯さんが映らないか…と思ったが残念ながらそんな事は起きなかった。だが、久しぶりに見る海馬コーポレーションの社内に胸躍る気持ちは本当。小学生のこと何度も訪れたところだ、見知った顔も多い。

「十代、今度また海馬コーポレーション行こうね」
「いいなぁそれ!そこでいっぱいデュエルできねぇかなぁ〜!」

ワクワクした様子の十代に思わず笑みが漏れる。幼馴染が楽しそうにしているのは、案外好きかもしれない。

「いっぱいデュエルできたらいいね」

といえば、彼は嬉しそうに満面の笑みを向けてくれた。