壊したい、壊せない
▽自分の過去を知ったら夢主はどんな顔をするのか?変わらずにいるのかそれとも離れて行くのか?▽
前回の後くらい
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手に入れたいと思っていたものがいざ手に入る瞬間、素直にその手を握り返すことを躊躇してしまう。全てを曝け出す勇気もなく、相手を傷付けるような言動をしてそれでも離れていかないのか試すことしか出来ない。
ずっと傍にいると言うが、本当のことを知れば離れていくのではないか。
そう思うと差し出そうとした手を引っ込めてしまうのだ。
光り輝くなまえを見れば、壊してしまいたいという衝動に駆られる。けれども、何故かそうすることも出来ない。
なまえからの祝福を素直に受け止めることも出来ず、臆病にも身構えてしまうのだ。
百ちゃんは、子供の心のまま大人になってしまったのではないかと思う。捨てられた野良猫が家猫になることにかなりの時間を要するように、百ちゃんもまた、私を信じて良いのか測りかねているのだろう。
それでも私は伝え続けることしか出来ない。百ちゃんも本当は祝福されることを望んでいるのだと思う。素直に手を伸ばすことが出来ないだけだ。
離れていく唇を追って、慈しむように唇を重ねると百ちゃんが目を瞠る。《大丈夫、大丈夫》と目で訴えて百ちゃんの背中をぽんぽんと叩けば、百ちゃんの無意識に強張った身体から力が抜けていった。
ちゅ、ちゅ、と音を立てて触れるだけの口付けを繰り返す。はぁ、と息を吐いて少し離れる。
百ちゃんは何か言おうと口を開くけど、逡巡して口を閉ざした。
「…百ちゃん?」
「……お前は…俺が欠けた人間でも傍にいると言うのか」
「欠けた人間……」
「両親と異母弟を殺したと言ったら?」
「……それは…」
じぃっと此方を見ているその瞳は、私を映していない。どう答えれば百ちゃんの望む答えになるのだろう。直ぐに答えることが出来ないでいると、『やはり俺では駄目なのか……』と自嘲するような薄笑いを浮かべた百ちゃんが立ち上がろうとした。このまま百ちゃんを離してしまえばもう二度と会えなくなるのではないかと思ってしまったら、私は何も考えずに身体が勝手に動いていた。
百ちゃんはやっぱり前世の記憶の百ちゃんと同じだ。
私は百ちゃんの両頬をぺちんと音を立てて触れるとしっかり目を合わせた。
「私は、貴方が欠けた人間だとは思わない。得体の知れない私を、貴方は傍にいても消そうとしなかった」
「ははぁ、お前なんかわざわざ殺さんでも野垂れ死ぬと思っただけだ」
「私が夜寒くて眠れないでいると温めてくれた」
「お前で暖を取ってただけだろ」
「私がいたら足でまといになるだけなのに、守ってくれるのはどうして?」
「……」
「貴方は優しい人だよ」
目の前にいる百ちゃんに届くように《貴方》と呼ぶ。どうでも良い人間を外套の中に引き込んで背中を撫でる事などしないだろう。
「貴方のこと、好きだよ」
「…俺は…好きだの何だのと言った感情は分からん」
「うん」
「お前のことを好いているのかも分からんし、只利用出来ると思っただけだ」
「うん」
「未来に恋人がいる奴の言葉を誰が信じるって言うんだ」
百ちゃんはきゅっと眉間に皺を寄せて吐き出すように言った。暗に自分に気を持たせて恋人の代わりにしているのではないか?と言いたいのだろう。
百ちゃんの瞳が不安で揺れている気がした。
「貴方が進む道が例え地獄だろうとついて行く。貴方が死にたいなら一緒に死んであげる。殺して欲しいなら私が……」
「はっ、ははぁっ、頭狂ってんのか」
「出来れば一緒に生きる道を選んで欲しいけどね」
『私の人生初の人殺しが百ちゃんなら満足?』と言えば、包み込んでいる百ちゃんの頬がじわじわ熱くなる。百ちゃんは私の全てが百ちゃんに向けられるのを望んでいるようだった。笑い声に歓喜が含まれていた。
「ふ、くく…祝福を与えたんだ、死んでも俺から離れられんぞ」
「ん…っ」
『お前と生きるのも悪くないかもなぁ』と柔らかな笑みを浮かべると、私の両手首を掴んで百ちゃんの顔から離させた。そしてそのまま引き寄せられる。私は引き寄せられるままに百ちゃんの胸に倒れ込んだ。
名前を呼ばれて視線を向ける。見上げた百ちゃんからはほの暗さが消え失せていた。
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《後書きという名の言い訳》
今回はUVERworldの《NAMELY》を聴きながら書き上げました。
どの曲も神曲なんですけど!この曲もうぶっ刺さりすぎて尾形さーん!ってなった|q •ㅿ•̀ )
主の手を取ろうとした尾形さんの心境がこんな感じのイメージに近かったので、誰か一人にでも良いなって思って頂けたら嬉しいです。
尾形さんには幸せになって欲しい♡
もっともだもだする予定だったんですが、思ったよりすんなりと尾形さんが落ちてくれました( ´﹀` ٥ ).。
これで一段落で、あとは小話程度の物を書いて行ければなぁと思っています。そんで、令和の尾形さんの話へと続けられれば……。プロットとか何も無く思いつきで書くので、文書とか展開がめちゃくちゃだし背景描写とかもなくぼんやりした内容ですが、読み流して下されば有難いです。