はじめての、
▼愛するということを、漸く理解出来た気がした▼
※かっこいい尾形さんはいません。
情事後の話
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獣のようなセックスをした後、尾形は気怠い身体を引き摺るようにして手拭いを濡らして絞り、なまえの身体を清めていく。
尾形にしてみれば、そんな気遣いを今まで異性にしてあげるという概念はなかった。出すものを出せれば相手が気持ち良いだとかそんなことはどうでも良かったのだ。
なのに、なまえには違った。このまま眠ってしまいたいと身体が訴えているけれど、甲斐甲斐しく世話をするのである。
改めてなまえの身体を見下ろせば、身体中に広がる鬱血痕と、歯型が痛々しい程に散っていた。そこに、痛そうだとか可哀想だという感情は一切なく、尾形は満たされている気がした。
尾形の身体にも引っ掻き傷や、お世辞にも上手いとは言えない痕のようなものが付けられている。尾形はそれを愛おしそうに指の腹でなぞる。男にしては白すぎる肌に、赤が映えた。
焦らされた分手加減は出来ないと言ったが、その言葉通り一度や二度では欲望が鎮まることは無く、なまえが意識を手放すまでなまえの身体を貪った。
《百ちゃん好みに仕込まれた》と言うだけあって、元々の相性も良いのか今までに経験したこともない程に気持ちの良いものだった。それがこの時代での尾形がそうした訳ではないのが腹立たしいが。
尾形はなまえの髪を一房手に取ると唇を寄せた。すうすう寝息を立てるなまえの顔をじぃっと見つめる。
この世に未練等ないと思っていたのに。ずっと求めていた祝福を、尾形は誰からも与えられないと諦めていた。
それなのに、母親とは違った包み込むような、それであって慈愛に満ちた祝福をなまえは尾形に与えたのだ。
恋愛感情が良く分からない尾形に、誰かと添い遂げようという考えは無かった。けれども、なまえとなら、それも悪くないと思ってしまったのだ。
『……俺は、
そう、心の中で呟けば、ぶわりと胸を温かいものが埋めつくした。
『ああ俺は、なまえを愛している……』
尾形は目頭が熱くなり、ぎゅっと目を瞑った。
︙
「ん…ひゃくちゃん?」
「…まだ寝てろ」
「んん…喉かわいた…」
「……ん」
尾形は涙が溢れそうになり、目頭を押さえた。その時、散々啼かされ掠れた声音が、尾形を呼んだ。ぴく、と尾形の肩が跳ねる。なまえが数回瞬きを繰り返し、ぽやんとした表情で尾形を見つめた。
たまたまかもしれないけれど、尾形が必要とした時にこうして声を掛けてくれることが嬉しいと思ってしまった。
ふ、と吐息混じりに笑うと洋盃に水を注ぎ口に含んで夢主に口移しする。こく、と喉が上下するのを確認して、それを数回繰り返した。
「……おい、また抱くぞ」
「これ以上は無理、死ぬ…」
すり…と尾形の首に両手を回して最後の一口を飲み込むと、尾形がなまえの濡れた唇を舐め上げて言った。なまえは肩を竦めると流石にこれ以上は明日寝たきりになってしまうと苦笑した。
それでも引っ付きたいらしく、尾形を引き寄せる。尾形もこれ以上するつもりもなく、引き寄せられるままになまえを抱き締めた。
︙
お互いの心音が聞こえて安心する。私は百ちゃんに出会えて良かったと心底思った。百ちゃんもそうだったら嬉しい。
百ちゃんの乱れた髪を整えるようにして頭を撫でると、百ちゃんが目を細めた。
私は百ちゃんに顔を近付けると、額、瞼、鼻、頬、顎、そして最後に唇へと口付けた。おいやめろ、と言いながら百ちゃんは止める気配は無い。それどころか唇が弧状に吊り上がっている。
くすくす笑いながらお互いの脚を擦り合わせるように触れ、体温を分け合った。
ああ、幸せだと思う。このままずっとこうしていたいと思う程に、満たされていた。