どろどろに溶かして愛してあげる@
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思わぬ出来事に脳内処理が追いつかない。まるでドラマでも見ているのかとさえ思ってしまうような出来事が自分の身に起こったのだ。
まぁ他人からすればこんなのがドラマだとすれば陳腐だと言うだろうけれど。けれども、なまえにとってはこの先関わることもないだろうイケメンが、何を思ったのか突然《あの時のことを覚えているか》と言い出したのだから、そう思っても仕方ないのではないだろうか。
それも、以前どこかで面識があったようで、《俺を変えたのはお前だ》などと言われれば驚愕を通り越して最早恐怖でしかないのだけれど。
新たなナンパのやり方なのか?ロマンス詐欺ではなかろうか。とさえ思うのだ。
骨の髄までしゃぶって使い物にならなくなったらぽいっと躊躇いなく捨てるのだろう。
そんな事が頭をよぎってしまい、ぶるっと身体が震えてしまった。
それと同時に、低く甘い声音で囁かれたことに嫌悪感がなかったのだから、頭を抱えるしかない。
どきどきと鼓動する胸をきゅっと掴んでふらふらと自分のフロアーへと戻ったなまえは、先輩に戻った報告と謝罪をした。
意味深な笑みを浮かべる先輩に居心地の悪さを感じたが、何も言わずにいてくれたのは正直有り難かった。
未だ頬に熱を持っている気がするが、仕事に集中しようと軽く両手で頬を叩いて仕事に取り掛かった。
約束の時間になり、指定されたロビーへと向かった。社員証を返してもらうだけだ。それが終わったらさっさと帰って、もう関わるのはやめようと思い、深呼吸すると『おい』と背後から呼ばれ、びくりと肩が跳ねた。それをしっかり見られていて、尾形はふっ、と吐息混じりに笑った。
「……行くぞ」
「あのっ、社員証返して下さい」
「ああ?渡したら逃げるだろうが」
「に、逃げませんよ」
はっとして、さっさと行こうとする尾形の背中に声を掛ける。思ったよりも声を張り上げてしまい、尾形が煩わしそうに顔を顰める。
じとりと窺い見られ、目を泳がせてしまう。ここで逃げ出してしまえば後が怖い。従うしかなく逃げないことを伝えると、尾形は小さく息を吐き社員証を差し出した。
受け取る時に指が掠めてどきりと胸が高鳴る。
ああ、このねっとりと絡みつく視線からはもう逃げられない。
初めて会ったあの時から、張り巡らせられていた蜘蛛の巣に捉えられた蝶のようだと錯覚してしまう程に。
『乗れ』と助手席のドアを尾形が開け顎で刳る。女性慣れしているのだろう。スマートな身のこなしに感嘆する。
『お邪魔します』と一言言ってから遠慮気味に乗り込む。助手席に座って良いものなのだろうか?
シートベルトを着けながらぼんやり考えていると、『生憎、お前以外にそこに乗せる女はいねぇ』となまえの考えを見透かしているかのように言われ、どきりとする。
『へ、へぇ……』と、別に気にしてませんアピールをするものの、声が裏返ってしまい、尾形に笑われてしまった。
「ははぁ、別に取って食いやしねぇよ」
「別にそんなつもりじゃ…ないです」
「ほぉ?抱いて欲しいってんなら「結構です!」」
そわそわと落ち着かない様子で視線をきょろきょろさせているなまえに、尾形は内心ほくそ笑んでいた。尾形を意識しているのが目に見えて、気分が良い。
くつくつ喉奥で笑う尾形に、なまえはムスッとした顔をして食い気味に断る。
ころころ変わる表情は、あの時と何ら変わりない。
尾形がふっと微笑むと、なまえは目を瞠った。そんな風にも笑えるのか、と思ったら何故だか胸が締め付けられた。
尾形の一挙一動にどぎまぎしてしまう。まだ会って間もないこの男の事を、駄目だと思う反面知りたいと思ってしまったのだ。
取って食いやしないの後に続く《今はな、》と言う言葉はこの時なまえには届いていなかった。
取って食いやしないと言った癖に、何故こうなったのか。目の前に整った顔があり、ふ、と唇に吐息が掛かる。そして尾形の薄い唇が重ねられた。
「……おい口開けろ」
「ん、ぅ……」
ぺろりとなまえの下唇を舐め上げ、つんつんと舌先でつつくが、頑なに口を開こうとはしない。なまえはふるふると頭を降って胸を押すが、ガタイのいいその身体を突き飛ばすことは出来ない。
「一緒に飯食うってことは先も期待してるってことだろうが。なぁ?なまえ」
確かに車に乗ったのもなまえの意志だし、《飯行くぞ》と言われた時点で断ることも出来た。流石に尾形が無理矢理どうこうするとは考えたくないが、行きませんと言ったところで聞き入れてもらえるのかどうかも分からない。
期待していると言われたって、同意は出来ない。それは尾形の勝手な言い分である。
確かにこの男の事を知りたいと思った。それは否定しない。けれども、期待した訳ではない。
だが、熱い視線を受ければ悪い気はしなかった。
だけど、でも、と揺れ動いてしまう。目の前の男はそれが分かっていて、更に甘ったるく夜を思わせる声音で囁くのだ。
そして今、なまえの状況はというと。食事を済ませた後、尾形に送ると言われのこのこついて行ってしまい尾形の自宅へと連れてこられたところである。
地下駐車場に車が止まり、逃げ出そうとする前に腕を掴まれ阻止された。
ひゅっと喉が鳴る。いつもより正常な判断が出来ないのは、緊張を解すために摂取したアルコールの所為だ。『俺はお前を送ってやらんといけないから飲めないが、お前は気にせず飲めばいい』とにこりと微笑まれ、『じゃあ一杯だけ……』とアルコールに手をつけてしまったのが悪い。自業自得である。
ふわふわした高揚感はあるものの、多分酔ってはいない(酔っぱらいは皆そう言うのだ)。
心のどこかで、尾形なら良いと思っていたのかもしれない。なまえとて、誰でも良い訳では無いのだが、既に気を許しつつある今、今後あるとも思えない出会いに1度でもこんなイケメンに相手にしてもらえるなら嫌な思い出にはならないだろう。
宥めるように項を撫でられ、完敗したなまえは睫毛を震わせ、目を閉じた。
『いい子だ』とこれから甘やかしますと言わんばかりに囁く低音に、なまえは身震いしたのだった。
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《後書きという名の言い訳》
前世で拗らせまくってた尾形さんが今世で夢主を見つけた日には感情爆発してくれたら良いなぁと思いながら書きました。
え、別人じゃね?ってツッコミはなしです。夢の世界ですからね(𓐍ㅇㅂㅇ𓐍)エェ…
もっと恋の駆け引きとか書きたいんですが、もうさっさと引っ付いてくれ〜って感じになってしまって。2人とも良い大人ですしね(≧∇≦)b
今後はすれ違ったりなんやかんやある予定にしてるので\(●°ω°●)/いつか書けたらいいなぁと思ってます。
転生してから夢主のこと待ちに待ってたので、もう我慢ならん!って感じでぐいぐいいく尾形さんを書くのは楽しいので、最後までお付き合い頂ければ幸いです。