バニーガールの日

これは、マレウス・ドラコニアと出会って間もない橘花皙がツイステッドワンダーランドで初めて迎える八月二日の出来事である。
おんぼろ寮。其処は行くあても無いに用意された第二の家。二ヶ月以上も経つと愛着が沸いてくるもので、また友人を招待することもできるルにとって助かる場所だ。しかしこのおんぼろ寮、よく得体の知れないものを招いてしまうのか、皙は数々の災難に巻き込まれてきた。その災難に入りそうな男が一人いる。マレウスだ。忽然と目の前に現れたかと思えば、いつの間にか消えて、初めてがいっぱいの皙にとってはそれ自体も恐怖の対象に成り得る。
それが何故、それが何故皙のバニーガール姿をじっくりと見ているというのだ。震える皙の足。傍から見れば完全にマレウスがに強制して着させているように思われるだろう。しかしそれは違う。本当は八月二日
のバニーの日に一人ではしゃいでバニーガール衣装をサムに頼んでまで調達したがそれを着たタイミングでマレウスが訪れたというだけなのである。
「つ、ツノ太郎…これどうかな」
静寂が二人の間を取り持つことは無く、ただの緊張を煽るだけだった。
どうしようか、気に食わないだとか言われて今この場で消し炭にされてしまったら。きっとグリムが帰ってくる頃には灰とバニーガール衣装だけが残されて、よくも分からずに片付けられてしまうんだ。自分を思いつめる考えを巡らせて顔色を悪くさせる皙に向かって、人の子よ、と言うのはマレウスしかいなかった。
「ウサギの格好か、それは」
こくりと首を縦に振ると、マレウスは優しく、そして怪しげな笑みを浮かべた。
「ウサギというのは懐くとよく甘える習性があるらしいが、僕にその姿を見せたということはそういうことか」
状況を上手く理解できていない皙でも分かっていた。マレウスは何か勘違いしていると。この後皙はマレウスに抱き上げられて茨の国まで連れて行かれそうになったが、途中で出会ったエースたちによって阻止されたのだった。