醒めない夢を、あなたと

ずっと夢だと思ってた。これはとても不思議な長い長い夢で……。ゴーストとかモンスターとか見たこともない怖い、人ならざるものも出てくるけど、これは夢だから怖くてもへっちゃらで…。
空飛ぶほうきも、ちょっぴり変な友達もクラスメイトや先輩も、しゃべる猫も。でもこれは夢だから、いつかは消えちゃうものなのに、夢が終わったらそれはもう失っちゃうものなのに。
あたしを呼ぶみんなの声も、みんなと一緒に過ごした思い出も、今まで感じた感情も、この長い長い夢から目覚めたら全部全部消えちゃうものなのに。
「人の子」ってツノ太郎から呼ばれる度に高鳴る胸が、あたしを見る優しい瞳が、あたしのことを気遣ってくれるその優しさが、あたしに訴えかけるように気づかせてくる。これが夢じゃないってことを。真っ赤に火照る頬を両手で抑えてしゃがみこみ、熱が籠ったような息を吐き出す。
あたしはあたしに芽生えたこの気持ちを失いたくない、あの人の傍を離れたくない。
あの日、はじめてここに来たとき、早く帰りたかった。大好きな家族がいる、大好きな家に帰りたかった。がんばって勉強して合格した高校に通いたかった。でも、ここに来てこんな、誰かを思うだけで胸が暖かくなったり、苦しくなったり、ドキドキしたりする気持ちが芽生えるなんて夢にも思ってなかった。
「どうしよう…もう、夢じゃない」自分のこの気持ちが、ツノ太郎を好きだっていうこの恋心が、これは夢なんかじゃないことの証明と実感をくれる。
これはとても不思議な長い長い夢なんかじゃなくて、これから先もずっとずっと続いてくあたしが生きていく場所なんだって、そう思わせてくれる。
これから先もこの醒めない夢を、この現実をマレウスやみんなと一緒にずっとずっと見ながら成長していきたいから。