マレ白和風パロディ


──きれいな人だと思った。
雪の中で美しく行むその姿に、思わず息を呑む。艶やかなその黒い髪と、鮮やかな翡翠の瞳。真白の中のその人が動けば、世界の時間が緩やかになるような……そんな、不思議な感覚。

「お前は……」

彼から発せられた低い声を捉える。そのぼんやりとこちらを認識した声で、現実へと引き戻される。

「わ!!!?わ、わわわ……!!」

いつの間にか近づいていたきれいな顔に、思わず驚いた声が出る。なんならバランスを崩して、雪へと倒れ込んでしまった。雪を踏む音はしていなかったのに、どうやってここまできたんだろう。
さっきまで少し離れた場所にいた彼は、本当にきれいな人だった。まつ毛が長く、顔に影が降りている。透き通るような白い肌。今まで出会ってきたどんな人間よりも整った顔。こんな辺鄙な場所に、こんなきれいな人がいたなんて。

「ヒトの子か。こんなところまで来るとは珍しい」

物珍しそうにこちらを見つめる彼に唖然としていると、少し長い爪が目立つ手を差し伸べてくれる。「驚かせてしまったようだ。こんな時期に人間が来るのは珍しくてな……」と呟く彼の顔に、寂しさが見える。なんだかそれに、胸が締め付けられるような気がして、差し出された手をそっと掴む。
その手に暖かさはない。氷のように冷たいその手に、思わず驚いてしまう。

「大変、冷えちゃってますよ!」

冬の寒さで未端が冷えてしまったのだろうか。それにしても冷たすぎる。つけていた手袋を外し、ぎゅっと彼の両手を、自分の両手で握り込む。彼は惚けた顔をして、私のことを見つめていた。

「なにを……」
「こうしてれば暖まるでしょ?冷えは恐ろしいですから」

その言葉を聞いた彼はしばらくきょとんとしたあと、喉の奥で笑い声をあげ、頬を緩ませる。

「おかしな子だ」

その、柔和で少しの暗さがある笑顔に、鼓動のリズムが乱れた気がした。