『名前、未来が動いたぞ』
電話越しの迅さんは真夜中だってのにとても楽しそうな声だった。
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昨日の今日で迅さんに「会わせたい奴が居る」なんて呼び出されると本当に嫌な予感しかしない。城戸さんとの一件だってあるってのに。それでも結局玉狛まで来てしまってる辺り、私は迅さんに弱い。
「お。名前丁度良いところに来たな」
「何で呼び出した迅さんはもう居なくなろうとしてるんですか」
玉狛に着いた私を出迎えたのは迅さんだった。
「実力派エリートはいろいろやることがあるんで」
「じゃあ私も帰ります」
「待った待った!今日はうちの新人を紹介しとこうと思って呼んだんだ」
上がってよ、と催促され仕方なくお邪魔する。
玄関にはいつもより多くの靴があるからきっと大人数此処に居るのだろう。扉を開けるのがなんとなく嫌になる。
「あれ?名前じゃない!」
「小南…烏丸、レイジさんも…玉狛勢揃いじゃないですか」
部屋の中は見事に玉狛支部勢揃いで何事かと思ったが、部屋のソファーに座る子達の姿を見てなるほどなと理解した。
「迅さん、この子達が玉狛の新人?眼鏡くんは本部の子デショ?」
「オサム、この人知ってるのか?」
「あ、えーと…ぼくも詳しくは…」
「玉狛に移籍したんだ。で、コイツら三人でチームを組んで遠征部隊を目指す。レイジさん達にマンツーで指導頼んだんだけど、名前にも面倒見て欲しくてさ」
迅さんは私が迅さんのお願いを断れないのを知っている。知っていて尚、「協力して?」なんて頼んでくるからたちが悪い。
「面倒見るのも良いですけど、自己紹介くらいあっても良いんじゃないですか。私眼鏡くんの名前すら知らない」
最初から断れないんだ。だったら受けるしかない。私は盛大に溜息を吐き出し、彼らの自己紹介を聞いてやった。
「三雲修、雨取千佳、空閑遊真ね……了解」
「で、そっちは自己紹介しないの?」
「人に名前聞いて名乗らないなんて失礼デショ。亜里阿支部の苗字名前、小南と同い年。ヨロシク」
「亜里阿支部?」
「亜里阿はボーダーの中でもちょっと特殊なんだ。正隊員になったばっかの眼鏡くんは知らないだろうな」
「特殊って?」
「そうだなぁ……君が黒トリガー持ちの近界民で嘘を見抜けるサイドエフェクトがあるってのが視ただけでわかるとか?」
わりとフランクに言ったつもりが驚いた顔をされた。まあそうだよね。
「な」
「何でそんな事がわかるのかって?」
「っ!!」
「まぁその話は追々な。名前もあんまりうちの新人を苛めないでやってくれよ」
ポンポンと、頭を叩かれた。別に苛めてないし。迅さんは後は任せたとか言って部屋を出て行き、彼ら新人三人の指導に付き合う事になった。
付き合う、と言っても射撃は教えられる事なんて殆どないから雨取はレイジさんに任せる他ない。残り二人のポジション次第だが、まぁ多分平気だろう。てことは私いらなくないか。
「烏丸と小南の方しか手伝えないや」
「じゃあ名前は此処で一緒に二人のこと見てよ」
「そうする」
宇佐美に言われ、オペレーターデスクで二部屋の様子を見ることにした。
「小南って人に物教えられるの?」
「どうだろうねぇ小南感覚派だから」
「それわかるわ。まぁ、でも」
習うより慣れろっていい言葉だよね
(期待の新人お手並み拝見といきますか)
09 わかっていても断れない
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