【スクルドの時計は動かない】





「名前、本部行くぞ」

支部長からの命令は絶対だ。

□■□

今日は奴等が帰ってくる日。
会議ついでにあいつら迎えに行くぞと言われ、会議あるのかとげんなりしながら本部へと足を運んだ。

「俺は先に会議室行ってるからちゃんとお前も来いよ」
「わかってますよ。バックレませんって」

本部で一度別れ、私は遠征部隊の到着をその場で待たせて頂く事にした。しばらくして黒い空間、そしてそこからどでかい船が現れる。作業員が忙しなく動いているのを遠目で眺めながら作業が終わるのを待つ。遠征艇の扉が開き、降りてくるのは精鋭部隊。その中の一人が此方に気付いて私に近付いてきた。

「あれ?名前じゃん?」
「出水生きてたか」
「ったりめーだろ」
「そうか。おかえり」
「っ…、ただいま」

数日ぶりに会うクラスメイトの姿。おかえりと言ってやったら目線を逸らされ、か細い声で呟かれた言葉。何で照れてんだコイツ。

「所でうちの馬鹿共は迷惑かけなかったか?」
「ああ…あの人達なら」
「名前!!!!!」
「ぐふっ…!!」

出水の歯切れの悪い言葉に頭にはてなマークを浮かべていた、のは一瞬だけ。突然のタックルに私の思考は文字通り吹っ飛んだ。

「名前出迎えに来て下さったのですね!!あの馬鹿と一緒に遠征行けなんて言われた時は死ねって言われてるのかと思ってたのにああもう会いたかったですわ!!」
「ちょっ…あ、凛香ちゃん…痛い…」

出水が引いてる。すっげぇ引いてる。ていうか助けろ馬鹿。私の脇腹にタックル、もとい抱き付いてきた彼女──東雲凛香と

「おい凛香、お前落ち着けよ隊長死ぬぞ」
「凍矢テメェ出てくるの遅ぇんだよ早く止めろ」

めんどくさそうに現れた彼──涼峰凍矢は亜里阿支部のメンバーである。顔を合わせるなり凛香ちゃんは私から離れ凍矢に突っかかる。出水は相変わらず引いてる。

「出水、もしかしてずっとこんなだった」
「ああ」
「それは本当に申し訳ない」

後で他の隊にも謝りに行こう。げんなりしてる出水と一緒に溜息が零れた。

「瀬尾ちゃんが待ってるから凍矢は早く支部に戻ること。凛香ちゃんは責任持って凍矢を支部に連れ帰ること。わかった」

無駄な討論が続きそうだったので早々に止めに入り二人を帰した。遠征の報告は隊長が行けばいいだろうし、どっちにしろ私呼び出されてるし。遠征部隊と一緒に会議室へと足を運んだ。ちなみに冬島さんは船酔いでダウンしてたから代わりに当真先輩が来てる。

会議室に入り、何時ものように支部長の隣へ。忍田さんと林藤さんが居ない事、三輪と奈良坂が居る事に嫌な予感がした。蒼也さんが遠征の報告をしてる中、支部長がクイッと袖を引っ張ってきた。

「凍矢と凛香は?」
「二人なら支部に帰しました。瀬尾ちゃんにも連絡済みです」
「了解。サンキューな」

「さて帰還早々に悪いがお前達には新しい任務がある。現在玉狛支部にある黒トリガーの確保だ」

城戸さんの言葉に空気が変わった。嫌な予感が当たった。奈良坂が説明を始める。なんか迅さんが、玉狛だけが悪いみたいな報告内容に苛立ちを覚えた。

「名前、お前も行け」
「は?ちょ…支部長?」

太刀川さんの一声で作戦決行が今日に決まったその流れで、支部長は私に言った。それはそれは衝撃的な一言で。

「但し条件。一つ、部隊は動かさない」
「っ……私一人で行けと?」
「草間、」
「悪いね城戸さん、うちは戦闘員が少ないんだ。まして一人は今謹慎中、もう一人は遠征帰りで休ませないとマズい。だから行かせるのは名前一人だ。お前は個人で動いた方がやりやすいだろ。あともう一つ、民間人に被害を出さないこと。それ以外ならやり方はお前に任せる。何したって構わん。戦闘も許す」

わざとらしくまくし立てる支部長に城戸さんの眉間の皺が濃くなった気がする。

「名前、亜里阿支部隊長として玉狛にある黒トリガーを此処に持って来い、俺命令だ」

支部長からの命令は、絶対だ。

□■□

会議室を出た後、今日の作戦会議をするって言ってた太刀川さん達から逃げるように本部を出た。向かう場所はただ一つ。

「あれ名前じゃない?どうしたのよ?」
「小南、空閑いる?」
「俺に何の用?ナマエ先輩」
「空閑、」



ちょっと勝負しよっか?
(黒トリガーでって言った時の小南の視線が突き刺さるのを私は無視した)


10 絶対って言葉は好きではない

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