「空閑、ちょっと勝負しよっか?黒トリガーで」
「黒トリガーで?こなみ先輩がいいならいいよ」
「名前…あんた何考えてんのよ?」
「ごめん小南。空閑のこと、知っとかないといけないと思って。勝手に知る方法じゃ、後味悪いから」
「…わかったわよ。その代わり、一回だけよ」
「ごめん」
そう言ったら「ごめんじゃないでしょ」って。そうだ。そうだった。こういう時は、
「ありがと、小南」
ありがとうが正しい。
空閑とトレーニングルームに入る。宇佐美には予め出来るだけ壁厚めにしてくれとお願いしてある。これで、大丈夫。
「さて、戦う前に聞いておきたいことがある。その黒トリガーは有吾さん?」
「親父のこと知ってるのか?」
「私は殆ど記憶にないけど多分会ったことある。うちの両親が有吾さんと親しかったんだ。だから話が聞きたい」
それから有吾さんの話を、黒トリガーの経緯を聞いた。私が知っておかなきゃいけなかった話。
「話してくれてありがとう…これで踏ん切りがつく」
「ふんぎり?」
「こっちの話だ。さぁ、じゃあ戦ろうか、折角だから本気で」
ニヤリと笑えば何とも好戦的な笑みを浮かべる。嗚呼、この子はきっと強くなるよ。
「名前先輩帰ったんですか?」
「ええ。遊真と勝負してやけにスッキリした顔して帰ってたわ」
「で、遊真、名前先輩はどうだったんだ?」
「無茶苦茶強かったよボロ負け」
□■□
目的地まで走る、翔る。
『もうすぐ目標地点ですわ』
「了解」
多数のトリオン反応を感知。
太刀川隊と風間隊、三輪隊と当間、迅さんと
「嵐山隊?」
恐らく忍田さんの命令だろう。これで迅さん達がだいぶ有利になるな。
『名前』
「支部長?」
『亜里阿の任務、忘れるなよ』
「わかってますよ」
ふぅ、と一息吐いて気持ちを落ち着かせる。多数の反応があるその地点に、足を踏み込んだ。
「亜里阿支部苗字名前、現着。草間支部長の命により任務を遂行する」
もう一度息を吐いて、今まさに衝突しようとする二組の間に降り立つ。振り下ろされた太刀川さんの弧月を右手で受け止める。驚いたのは両者とも。
「名前!?お前、」
「っ…!太刀川引け!」
蒼也さんの声が先か、後か。
放った弾は今さっきまで太刀川さんが立っていた所の地を抉った。零距離なら逃さないと思ったんだけど流石A級一位。どちらにしても不意打ちは失敗ということ。
「蒼也さんにはこの眼見られた事あるからやっぱりばれちゃいましたか、残念」
「名前…お前何を考えている。命令に逆らう気か?」
「今日はいろんな人に何考えてるって言われる日なんですね。私は支部長の命令で此処に来たんですよ。私の任務は玉狛の黒トリガーと、隊務規定違反の取締役です」
金色の瞳を向ける先は、本部部隊。
ボーダー特殊部隊、亜里阿。
隊務規定違反者の追跡及び処罰、取締を行う。殆どそんな事起きないから民間人保護後の記憶操作くらいしかしてなかったけど。支部長は私に言った。「亜里阿の任務を忘れるな」と。
「だから悪いんですけど本部の皆さんは御退場願いますか。模擬戦を除くボーダー隊員同士の戦闘は固く禁ずる、です。玉狛の件はうちでやります」
「断る、と言ったら?」
「手段は問わず、全員ぶった斬ります」
あ、でも斬ってないやさっき。うん。まぁいいか。これで引いてくれればって思ったけど引いてはくれないようだ。太刀川さんが再度構え直す。皆、臨戦態勢だ。
「仕方ないか…じゃあ覚悟してください」
チラリと右手に視線をやる。
こんなに大勢の前で使うのは初めてだ。こうなるの予想出来たからさっき使っといて良かった。最近使ってなかったからちゃんと扱えるか不安だったし、今日は比較的調子が良い。
「"戦神の鎖"…起動」
瞬間、右手の黒い腕輪と指輪からジャラリと音を立て鎖状のものが現れ、ゆらゆらと揺れるそれは向かい合う彼等へ容赦なく襲い掛かる。
「名前、加勢して貰っといてなんだけど、それ使っていいの?」
「大丈夫です。手段は任せるって支部長に言われてるので。後、私も支部長も派手な喧嘩は好きですから使っても怒られないかと」
「草間さんらしいや」
迅さんは笑ってる。他の隊員は嵐山隊も含めて大半がざわついてる。そりゃそうだ。だって此処にいる殆どが、これを知らないから。
「何だあれ…?」
「"戦神の鎖"…話には聞いていたが実際見るのは初めてだ」
「何?三輪知ってんのか?」
「あれは──黒トリガーだ」
「さて、それでは皆さん」
派手な喧嘩しましょうか
(鎖はまるで金色の瞳をした咎人への呪いのようだと、私は思った)
11 全部背負う事にした
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