「ごめん烏丸ギリギリになった」
「大丈夫です。此方こそ無理言ってすみません」
風間隊に付き合わされたせいで烏丸と約束した時間はギリギリ間に合うか不安だったが、裏道を(グラスホッパーで)駆け抜けてきたのでなんとか間に合った。
「おっナマエ先輩こんばんは」
「こんばんは。空閑も一人なの?」
「今日は小南先輩も防衛任務で居ないんですよ。俺ももうバイト行かないと」
「なるほど。じゃあまぁ二人まとめて面倒見るよ」
「有り難う御座います。修、遊真、今日は名前先輩が面倒見てくれるから迷惑かけるなよ」
お願いします、と頭を下げて烏丸は駆け足で玉狛から出て行った。嗚呼これは多分私のことギリギリまで待ってたやつだな。悪いことをしてしまった、今度何か御馳走してやろう。気を取り直して二人を連れて訓練室へ向かう。宇佐美も事情を把握しているようなのであっさりと協力してくれた。
「さてと。三雲は銃手志望なんだってね」
「はい。あの、苗字先輩も銃手用のトリガーを使えるって烏丸先輩が」
「使えるけど私の戦い方はあんまり参考にはならないかな。まぁとりあえず三雲一回勝負しよっか?何処まで何が出来るのか見たい」
「お願いします!」
「オサム、ナマエ先輩メチャクチャ強いぞ」
「空閑も後で相手してあげるから覚悟しときな」
「ヨロシクお願いします」
三雲を見送って空閑が部屋から出て行った所でお互いトリガーを起動する。彼の戦闘能力が高くない事は視ればわかる。さて、どうやって強くしてやろうか。なんて、少しわくわくしている自分がいた。
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十本やって十本とも無傷。まぁそれは当然として。最初の五本はただ彼をいなしつつ基本的な接近戦を。残りの五本は三雲と同じスタイルに装備を変えて蜂の巣にしてやった。
「三雲は銃手ってより射手だな。レイガストで防御しつつ弾丸飛ばしていく感じ。まずはあれだ弾丸の飛ばし方を叩き込むしかないな。後接近戦が超絶弱過ぎる」
「はい…」
「オサムこてんぱんにやられたな」
「こればかりは慣れしかないよ。ただ、射手は自由度高いポジションだから考えようによっては自分で攻める事も、味方のフォローも出来るし凄く立ち回りやすくなる」
「あの、最後にやってたあれは…、」
三雲の言葉に思い当たる節があり、ああ、と声が漏れた。
「零距離メテオラはオススメはしないかな。零距離は当たればダメージデカいんだけどトリオンコントロールがね…ミスると自分も吹っ飛ぶ。そもそも君にはまだあの近距離で戦うスキルがない」
ああでもアステロイドなら爆発しないか、って思ったけど言わないでおこう。無謀な戦い方を覚えさせては後で烏丸に怒られてしまう。
「よしじゃあ次は空閑の番だな。三雲には良いもの貸してあげるからこれでトレーニングしなよ」
「良いもの?ですか?」
頭に沢山の疑問符を浮かべてる二人を余所に、私は鞄から電子辞書サイズの小型端末を取り出して、それを訓練室の操作盤にリンクさせる。
「これでよし」
エンターキーを押して終了。そこに現れたのは三雲に似た黒い人影。
「こいつ、さっきの三雲の戦闘データを元に作られてる。学習機能付きだから倒せば倒すだけ強くなる、まさに君自身のコピーと言ったところだ。実戦経験積むにはまず己を知るところから始めよう」
瀬尾ちゃん特製訓練用プログラム。
全正隊員のデータを搭載していて、訓練の相手を好きに選べる。尚且つ学習機能もあるから戦った分だけ強くなる。他にもランク戦仕様に訓練室を弄ったりも出来る優れ物。亜里阿支部の訓練室にはこのプログラムが組み込まれてるのだが、本部や玉狛には入っていないから別端末からデータをリンクさせてやるしかないのが難点だけど。同じく瀬尾ちゃん特製の端末があれば何処でもこれが行える。故に本部の訓練室に閉じ籠もる事が多いのだ。
「宇佐美、三雲の方ちょっと見てあげて。そっちからでもレベル調整とか出来るから」
「りょーかーい」
「よしそれじゃあ空閑戦るか」
「今日は負けないよ」
好戦的な視線をぶつけてくる後輩に心躍らずにはいられなかった。
喧嘩馬鹿上等
(上には上がいるって教えてあげないと)
18:可愛い子には本気でぶつかれ
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