戦闘訓練で空閑が0.4秒という数字を叩き出し注目を集める中、バイトだったらしい烏丸が合流した。
「名前先輩こないだは有り難う御座いました」
「いやいや。此方こそ待たせちゃったみたいで悪かったよ」
今度御飯奢るよと言えば有り難う御座いますと礼儀正しく返ってくる。どうやら空閑たちの様子を見に来たらしい烏丸は三雲に今の状況を聞いている。そんな中木虎が烏丸にランク戦を持ちかけてた。そういえば私も烏丸とランク戦なんて久しくしてないな。
「烏丸私ともランク戦しようよ」
「名前先輩は俺より修の相手してやって下さい」
「名前先輩も、三雲くんの指導を…?」
「ああ、うん。烏丸に頼まれて。射手の訓練付き合ってる」
「(烏丸先輩だけじゃなく名前先輩まで…羨ましい…!!!!)」
木虎が何故だか愕然とした表情になっているが気にしないでおこう。そんなやり取りをしていたら突然蒼也さんが三雲への模擬戦を持ちかけ出した。なんなんだよ皆して。嵐山さんや烏丸は止めに入ってる。まぁそりゃそうだ、三雲の実力で蒼也さんに勝てるわけがない。三雲だって馬鹿じゃないからそれはわかってるはずだ。
(あ、これは)
視えた未来──三雲が蒼也さんの誘いに乗ったのが予想外で少しだけワクワクした。時枝が気を利かせて空閑以外の訓練生を捌けさせてる。流石時枝、やっぱり良い仕事する。
蒼也さんと三雲の模擬戦が始まった。正直視なくても結果はわかるんだ。ただでさえある実力差に加え、訓練室ならトリオン切れがないから隠密トリガーは使いたい放題。
「まぁ勝負にはならんだろうな」
「烏丸先輩、名前先輩、もうやめさせて下さい。見るに耐えません」
木虎の言う通り、確かに見るに耐えない。三雲がボッコボコにされてるだけだし。木虎の言う「勝つつもりでやらなきゃ勝つ為の経験は積めない」ってのもわかる。
(でもなぁ…)
模擬戦最中の二人に目を向ける。丁度終わったようで蒼也さんが三雲に何か言ってる。此処からでは聞き取れないそれが、二人が何を考えているか、私にはわかる。
蒼也さんが三雲に模擬戦を持ちかけたのは、迅さん絡みだってことも。それを知って三雲の雰囲気が一変することになるのも。
そして、二人のラスト一戦が始まった。
蒼也さんが姿を消すと同時に室内を埋め尽くす超低速散弾。これで蒼也さんは隠密トリガーが使えなくなる、けど
「隠密トリガー無しでも風間さんは強いぞ」
そりゃそうだ。隠密戦闘無効状態での戦闘は何たって私と訓練しているんだから。この程度の策で崩れる程、風間蒼也という人間は弱くない。斬りかかりに向かう蒼也さんと、レイガストの盾と弾丸で待ち構える三雲。スラスターでのシールド突撃で蒼也さんを壁に追いやる。
「あ、」
「どうかしました?」
「いや、うん。なんでもないや」
この先の展開が視えた私はさっきよりもワクワクしてるし、後で蒼也さんに何か言われないかちょっとだけ不安になった。
結果は相打ちで引き分け。
此処でかましてくれたらもっと面白かっただろうけど、蒼也さん相手に良くやったものだ。烏丸が挨拶に行く為立ち上がったので私もそれに着いて行く。
「うちの弟子がお世話になりました」
「烏丸……そうか……お前の弟子か。最後の戦法はお前の入れ知恵か?」
「いえ、俺が教えたのは基礎のトリオン分割と射撃だけです。後は全部あいつ自身のアイデアと…名前先輩の影響じゃないですか」
「名前、やはりお前か」
「え。私別に三雲に零距離メテオラなんてお見舞いしてないデスヨ。零距離は当たればデカいとか教エテナイシ」
言ったらジト眼で返された挙げ句溜息吐かれたから、わざとらしく肩を竦めてみる。
「でも蒼也さん読み通されて最後ムキになったデショ。そういうの嫌いじゃないんじゃないですか」
「どうでした?うちの三雲は」
烏丸の問いに蒼也さんは模擬戦の総評を述べる。蒼也さんの三雲に対する評価は間違ってない。三雲は弱い。だけどちゃんと弱いのもわかった上で頭を使う。だからこその蒼也さんのあの評価なんだ。
蒼也さんの背中を見送っているそんな時だ。左手に付けている指輪型の通信機が鳴っている。これは亜里阿専用の物、かつ、今この場でこれを鳴らすような相手は考えなくてもわかるし、わざわざこっちを使ってくるということは。
「狙撃手組なんかしやがったな…」
エマージェンシーコールが鳴り響く
(はいはい、なんて呑気に返事したら早く出ろって怒声が飛んできた)
21 予想外だからこその緊急事態
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